慰安婦問題について、いろんな報道: 韓国経済急減速の真実 「強い韓国」はどこへ行ったのか?(上)(下)

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2015年4月23日木曜日

韓国経済急減速の真実 「強い韓国」はどこへ行ったのか?(上)(下)

――向山英彦・日本総合研究所上席主任研究員に聞く
2015年4月23日 (上)2 3 4
足もとで、韓国経済の減速が鮮明化している。
2000年代 は「最強」と呼ばれ、世界のあらゆる市場を席巻した
韓国の勢いは、どこへ行ってしまったのか。
韓国経済急減速の原因と復活への課題について、韓国経済に詳 しい
向山英彦・日本総合研究所上席主任研究員に聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

「強い韓国」はどこへ?
韓国経済が減速した真の理由

「危機説」が唱えられる韓国経済。
朴政権の景気対策も手詰まり感がある。
実態はどうなっているのかPhoto:Yonhap/AFLO 
――韓国経済の減速を指摘する声は以前からありましたが、
ここにきて減速が鮮明化していると言われます。
実際のところ、韓国経済はどれくらい減速しているのですか。

 韓国の実質GDP成長率は、2011年3.7%、12年2.3%、13年3.0%、
14年3.3%と、2~3% 台で推移しています。
とりわけ、14年10-12月期は前期比0.4%と、7-9月期の同0.9%から
急減速しました。今年も3%程度の成長になると予想されます。

――現在の韓国経済を、どのように見ていますか。
  確かに、経済の低迷が続いていますが、韓国経済自体が
大きく変わったとはみていません。
外部環境の変化によって、従来の成長モデルが
機能しなくなったと考えています。
振り返れば、韓国経済が日本で最も高く評価されたのは、
おおむね2010~11年です。
この時期 には、日本の新聞や雑誌で「韓国経済に学べ」
「最強韓国」という社説や特集が現れました。
11年の紅白歌合戦に韓国のグループが3組も出場し、
韓国に対す る「好感度」は高かったと言えます。
しかし、2012年8月に当時の 李明博大統領が竹島(独島)に
上陸したことをきっかけに、日韓関係が冷え込みました。
ほぼ同時期に韓国経済が減速したこともあり、
韓国経済に対する見方が 一変し、
ネガティブな捉え方が主流になって行きました。
十分な分析を欠く「韓国経済危機」も流布しています。

――そもそも、これまでの韓国経済の強みは
どこにあったのでしょうか。
 韓国では1990年代後半の通貨危機後、大幅なマイナス成長に陥り、
構造改革が実施されました。
国内市場の縮小 もあり、韓国の大企業は2000年代に入り、
輸出や現地生産などグローバル展開を加速させました。
一方政府は、法人税や電力料金の引き下げ、
近年では FTAの促進などを通じて、企業のグローバル展開を
積極的に支援しました。
その結果、韓国企業は世界市場でシェアを上げ、
国内でも輸出主導型の経済成長が続いたのです。
通貨危機後のリストラやウォン安などが、
輸出競争力の上昇を後押しした側面もあります。

 これが2000年代に形成された「韓国型の成長モデル」です。
当時は日本経済が停滞していたので、そうしたグローバル化を進める
韓国の姿勢を見倣おうという空気も日本にはありました。

――では、韓国経済はなぜ減速してしまったのでしょうか。
 この「韓国型の成長モデル」が機能不全に陥ってしまったからです。
今の低成長の原因は、
(1)成長の牽引役とし ての輸出の鈍化、
(2)それによる投資の減速、
(3)民間消費の伸び悩みです。輸出の成長への寄与度は
2010年6.0%2011年7.5%でしたが、 14年には1.5%へ低下しています。
足元では、輸出は二四半期連続でマイナスとなっています。

 一方で1990年代前半に総じて5%を超えていた消費者物価上昇率は、
2014年に1.3%へ低下、足元では 0.4~0.5%まで落ち込んでいます。
経済の低迷とインフレ率の低下などから、「日本型デフレ」に対する
警戒感が強まっています。
なぜこうした事態に なってしまったか。
その背景にあったのが、チャイナショックと円安・ウォン高です。
 従来の成長モデルは財閥系企業のグローバル展開による
輸出の拡大と、それに伴う投資の拡大によって成り立っていたのです。
これはとりもなおさず、世界経済が安定的に拡大して
初めて成り立つ成長モデルです。
それが、チャイナショックと円安・ウォン高によって崩れてしまいました。

 輸出の鈍化に加え、所得の伸び悩みと
家計債務の増加などによって民間消費の勢いが弱くなり、
さらに景気減速が続くという流れになっています。

チャイナショックと円安・ウォン高が韓国経済減速の二大インパクト ――チャイナショックと円安・ウォン高が
韓国経済減速の原因なのですね。
まず「チャイナショック」の影響とは、具体的にどんなものですか。

 その影響はいくつか指摘できます。
第一に、中国の高成長期に形成された好循環メカニズムの逆流です。
中国が二ケ タ成長を続けていた時期には、
資源需要の拡大と価格の上昇が生じました。
それに伴い資源国では輸出が伸び、成長が加速し、
それにより消費と投資がさらに拡大しました。
さらにこれが、世界的に海運、船舶、掘削機械などの需要を増加させ、
韓国の海運や船舶業界はその恩恵を受けたのです。

 ところが、中国政府が構造改革に政策の重点を移し、
中国の成長率が低下し始めると、その高成長期の
好循環メカニズムは終焉しました。
近年ではこのメカニズムが逆流し、資源価格の下落、資源国の成長減速、
そして世界経済の減速へとつながりました。
とりわけ韓国は、貿易面で対中国依存度が上昇していたこともあり、
中国の成長減速の影響を強く受けたのです。

 第二に、中国における過剰生産です。
リーマンショック後に中国では、4兆元の大規模な景気対策を行いましたが、
それによって過剰生産が生まれ、鉄鋼や石炭製品が
アジア市場にどんどん流入しました。
これが市況を悪化させ、韓国の鉄鋼・石油化学産業が影響を受けました。

 そして第三に、中国企業製品の台頭です。
技術開発、国産化政策、外資の進出などを通じて、
中国企業の製品が競争力をつけてきています。
低価格のスマートフォンなどで中国企業が
市場シェアを伸ばし、サムスンのシェアを奪っていったのです。

こうして見ると、韓国はチャイナショックの影響を
一番多く受けたと言えるでしょう。
――では一方で、円安・ウォン高は、なぜ起きたのでしょうか。
 これには、2つの方向性があります。
日本ではデフレからの脱却を目指して大胆な金融緩和を推し進める
アベノミクスが始まり、円安が加速しました。
 他方韓国では、この数年間、経常黒字の拡大を背景に
ウォン高が進展しました。
経常黒字は投資が貯蓄を大幅に下回った結果であり、
「不況型黒字」の性格が強いものです。
足もとでは比較的落ち着いていますが、
一時は1ドル=1000ウォン近い水準までウォン高が進みました。

 この結果、ウォンは円に対してかなり高くなってしまった。
日本の場合は昨今の円安が企業業績にプラスに作用しましたが、
韓国の場合はウォン高が企業業績にマイナスに働いたのです。
従来の「韓国型成長モデル」に代わる
新しい成長モデルが構築されていない

――チャイナショックと円安・ウォン高の影響は、
それほど大きかったということなのですね。
 ただ、従来の成長モデルは好調な世界経済の上に成り立っていたので、
外部環境が悪化すれば、成長が減速するのは避けられないものです。
その意味では、近年の経済低迷は十分に予測されていたものでした。
経済が低迷しているもう1つの原因は、従来の成長モデルに代わる
新しいモデルが、まだ構築されていないということです。

――現在、政府は新しい成長モデルを模索するために、
どんな対策を行っているのですか。

 2013年2月に就任した朴槿恵大統領は、国民の幸福を実現するため、
「創造経済」の実現と経済民主化の推進を目標に掲げました。
従来のキャッチアップ型に代わるイノベーションにもとづく成長、
財閥主導に代わる大企業と中小企業との共生を図っていくという
考え方です。同年6月に発表されたアクションプランには、
ベンチャー企業の創出、創造的な技術・アイデアを生み出す環境の醸成、
情報科学技術と伝統的技術との融合 促進などが盛り込まれました。

 その具体的な計画が、2014年2月末に
「経済革新3ヵ年計画」として策定されました。
これが朴政権の中期経済計画となり、昨年半ばから
これを踏まえて色々な施策が始まっています。
とくに注目されるのが「創造経済革新センター」の設置で、
今年上期までに主要17都 市に設けられる予定です。
ここでは、地方自治体、大学、政府系研究機関、
金融機関などが連携して、ベンチャー企業の育成と
成長促進を図って行きます。
財閥系企業がメンターの役割を担います。

 ただ、成果が出るまでには相応の時間がかかるため、
足もとでは政策の重点が景気対策に移っています。
現在その指 揮を執っているのが、経済担当副首相で
企画財政部長官でもあるチェ・ギョンファン氏です。
これまで行われた政策は、公共支出の拡大、
不動産融資規制の実質 的な緩和、経済の刺激に重点を置いた
税制改正、景気に配慮した2015年予算の策定などです。
韓国銀行も政府の政策に歩調を合わせて、
昨年から3回利下げを実施しています。
 こうして、中期的に経済の革新を図りながら、
短期的には景気対策に力を入れているのが今の韓国の姿です。
しかし、景気対策にはなかなか効果が見えず、
政府の対策には手詰まり感があります。

――景気対策に手詰まり感がある背景には、
どんな課題があるのでしょうか。

 第一に、民間消費の伸び悩みの原因となっている
家計債務の増加に対して、一貫した対応ができないことです。
家計 債務額(14年の家計債務額の対可処分所得比率は134.7%)
の中身を見ると、住宅ローン、子どもの教育ローン、
退職後の新規事業資金の借入れなどです。
足元では、景気対策として行われた利下げと
不動産融資規制の緩和に伴い住宅ローンが増えています。

 不動産融資規制の緩和は、政府の景気対策の中でも
比較的効果が出ており、不動産市場には回復傾向が見られるものの、
家計債務を増大させる要因にもなっています。
家計債務が警戒水準に達しているためか、
中央銀行総裁のイ・ジュヨル氏は、就任当初、利下げに
必ずしも積極的ではありませんでした。
政府の強い要請を受けた利下げと見ています。

 住宅ローンは中所得層が中心ですが、低所得層では
生活費を補填するための借入れや、債務の利払いのための借入れも
増えており、今後の動向に注意が必要です。

 第二に、大胆な財政出動がしづらいことです。
韓国は伝統的に、財政に対して極めて保守的な考え方を持っています。
歳出を歳入の範囲内に収めるという財政均衡主義をとってきたがゆえに、
政府の財政赤字は対GDP比3割程度と、
先進国の中でも比較的低く抑えられていますが、
一方で景気が悪化しても財政出動がなかなかできないという
側面があります。最近では景気の低迷で、歳入も伸びていません。

年金給付に頼れない韓国人の現状
高齢者の貧困率はOECD中で最高に
 そして第三に、福祉関連の支出が増加していることです。
韓国は2018年に、全人口に占める高齢者の割合が
14%以上になる高齢社会に入りますが、
多くの高齢者が厳しい生活を余儀なくされています。
 OECD統計によれば、韓国の高齢者の相対的貧困人口率
(所得分布における中央値の50%に満たない国民の全体に占める割合)
は47.2%と、OECD 加盟諸国の中で最も高い(平均は12.8%)のが現状です。
高齢者の貧困の要因として、企業の退職年齢が早いこと、
国民年金保険制度の導入遅れによる年金 給付額の低さ、
家族の扶養機能の低下(核家族化、若者の就職難)などが挙げられます。
特に問題なのは年金給付額の低さです。

 日本、米国、ドイツなどのOECD諸国を見ると、高齢者は収入源を
ほとんど公的年金に依存しています。
ところが韓国の場合は、年金給付額が低いためそれに依存できず、
何らかの形で仕事を続けて収入を得ている人が多い。
就業者数に占める自営業者の割合を見ると、
韓国はOECD諸国のなかで非常に高くなって います。
仕事による収入に続けて高いのが、子どもからの援助です。

>>後編『韓国経済急減速の真実 「強い韓国」はどこへ行ったのか?(下)』 
に続きます。
むこうやま・ひでひこ/日本総合研究所上席主任研究員。
中央大学法学研究課博士後期過程中退、ニューヨーク大学で修士号取得。 
証券系経済研究所を経て、1992年さくら総合研究所入社し、
現在日本総合研究所調査部上席主任研究員。
中央大学経済学部兼任講師。専門は韓国を中心にし たアジア経済の分析
 
ただし近年、大学を卒業しても就職できない子どもが多く、
大学院や就職予備校に通ったりしているため、高齢になった親が
子どもの教育費負担に苦しむケースも少なくありません。
 こうした状況を打開すべく、朴大統領は大統領選の際に、
「65歳以上の全ての高齢者に月20万ウォンの基礎老齢年金
(現在の名称は基礎年金)を支給する」と公約しました。
しかし、これを「増税せずに実現する」と言ってしまったことで、
その後自らの政策を縛ってしま います。
 経済成長を通じた自然増収、支出構造の調整、

税金の非課税や減免の見直し、課税を免れている地下経済の炙り出し
などによって財源を確保しようとしましたが、景気低迷で
税収が伸び悩んでいることもあり、十分な財源を確保できないことが
判明しました。そこで結局、
「所得上位30%には支給せず、残り70%には最大20万ウォンまで支給する」
という方針へ、内容を大幅に変更せざるを得なくなりました。
 高齢化の進展に伴って増加する福祉関連支出を、

どうやって確保していくのか、これは経済革新に並ぶ
大きな課題と言えるでしょう。

「経済革新三ヵ年計画」と景気対策の行方
朴政権の経済政策はなぜ手詰まり感があるのか?

――朴政権は経済政策を重視してきたイメージがありますが、

短期・長期の対策を打っても、なかなか成果が出ないわけですね。
朴政権に対する国内や国際社会からの評価は、どうなっていますか。

 朴大統領の支持率は、年初に30%程度にまで低下しました。

支持率低下の一因は、言行不一致です。
前述した基礎年金問題が象徴的です。
また、増税しないと言いつつも、たばこ税を引き上げるなど、
増税が行われています。
国民は「言っていることとやっていることが違 う」と不満を持ちました。

 また経済政策においては、朴大統領の言う

「創造経済」が具体的に何を目指しているのかが、わかりづらい。
目指す方向性はいいとしても、政策の実効性に確信がもてないのです。
 中長期を見据えた「経済革新三ヵ年計画」と短期を見据えた

景気対策との整合性がとれていないことも、指摘されています。
経済を革新するなら、競争力をなくした産業や企業の淘汰を
進めていかざるを得ないですが、足もとの景気に配慮すると
なかなか思い切った政策ができない。
ある意味、バランス型の対策になってしまいます。
 他にも、人事の躓き、韓国船沈没事故後における対応の拙さなど、

大統領の意思疎通の取り方に問題があるのではないか、
という批判もあります。

――こうして聞くと、韓国経済の減速には

構造的な問題が関わっており、それを解消しないと
真の意味での経済革新を図ることは難しいように思います。
今後韓国は、どんな改革を進めるべきなのか。
大きな問題の1つは、国の経 済が世界経済の動き、
とりわけ中国の動きにあまりにも左右され過ぎるということだと思います。
 世界経済の低迷などで外部環境が変化すると、

アジア諸国ではよく内需と外需のバランスが取れた成長が必要だという
議論が出てきますが、それを実現するのは難しいと思います。
韓国のような「小国開放経済」では、
外部環境に左右されるのは避けられない面があります。

 ただ、そんななかでも一部の韓国企業はチャイナリスクを認識し、

動き始めています。
韓国政府は外交面で中国との 関係緊密化を図っていますが、
企業は状況を冷静に見つめています。
たとえばサムスン電子は、中国に半導体生産工場をつくる一方、
スマホ・家電関係はベトナ ムに生産拠点を移動していますし、
LGも似たような動きをしています。
中国での事業がうまくいかなかったロッテも、
東南アジアでの事業に力を入れていま す。

 むろん、輸出依存はある程度是正できるとしても、

韓国は国内市場が小さいので、大きく変えることは難しいでしょう。
政府は内需拡大のために、バイオ、医療、ヘルスケア、
スマートシティ関連産業の育成には力を入れており、
こうした取り組みは、徐々に実って行くと思い ます。 

不満を感じる一方で憧れも 財閥に対する複雑な国民感情
――構造問題と言えば、以前から指摘されている

財閥偏重型の経済成長も挙げられます。

 経済の民主化は、先の大統領選で大きな争点になりました。

2000年代、財閥系企業はグローバル展開を進めて成長しましたが、
財閥系企業と関係のない国民にとっては、財閥主導の成長が
自分たちの生活に必ずしもプラスになっていませんでした。
非正規雇用の増加、格差 の拡大など、財閥主導の成長に
不満をもっていたというのが現実だったと思います。
だからこそ、先の大統領選で経済民主化が出て来たわけです。

 とは言え、財閥中心の経済構造を変えることは容易ではない。

財閥改革があまり進んでいないのは、財閥の勢いがなくなることによって、
経済全体の活力がなくなってしまうことを恐れているのでしょう。
また、前述したように、ベンチャー企業のメンターとしての役割を
財閥に期待しています。
こうしてみると、朴大統領は財閥に対して、政府の政策と協調した
経営を行うこと、国民と共に歩む意識を持つことを求めていると考えられ ます。

――財閥中心の経済は、どのように是正されるべきでしょうか。

 経営トップの脱税事件やナッツ・リターン事件からもわかる通り、

財閥のガバナンス、体質改善を求める声は大きい ですが、
韓国人の財閥に対する感情は結構複雑です。
不満を持つ一方で、多くの親は、できれば自分の子どもたちに
財閥系の企業に就職してほしいと思っている。
やはり世界に通用する企業だし、そこに就職することで
高い年収や社会的地位が得られ、様々な可能性が開かれるからです。

 大企業と中小企業とでは、経済的な格差や

社会的な評価があまりにも違いすぎる。
そのため、大企業に就職できなかった優秀な学生たちが、
中小企業に就職したがらないのです。
このため、中小企業は優秀な人材を確保できず、
技術力の底上げも成長もできません。悪循環です。
 結局、こうした状況を是正しないと

経済全体の民主化・活性化もできないわけで、
中小企業をいかに成長させるかは、古くて新しい問題です。
モバイルから高利益の半導体へシフト
経営体制の見直しを進めるサムスン

―― 一方で、新興国企業の台頭などによって、

サムスングループをはじめ財閥系企業の成長力も落ち始めています。
財閥自身、経営体制の見直しを迫られそうですね。

韓国企業の強みは、汎用品を中心とした大量生産で、

サムスン電子をみても、自社のオリジナル製品は基本的にありません
新しく市場に出た製品をベースに、世界の各市場で必要とする機能をつけ、
なおかつ生産コストを引き下げて大量生産することで成長してきました。
こうしたやり方は、いずれ新興国企業に追いつかれてしまいます

 ただ、韓国企業がこのまま失速を続けるとは思いません。

サムスン電子がいい例です。
サムスン電子のセグメント別 営業利益を見ると、2014年初頭くらいまで、
営業利益の7~8割程度をITモバイル(スマートフォン)が稼いでいました。
しかし、同部門の営業利益は 2013年7~9月期をピークに減少し、
2014年7~9月期には前年水準の4分の1程度に落ちました。
ただし、これは以前から予想されていたことです。 
中国企業がつくる低価格製品の台頭やモバイル市場の成熟によって、
利益が減少するのは避けられないことです。
 むしろ注目すべきは、デバイス(半導体)部門の利益が伸びていること。

2014年10~12月期は営業利益の約60%をデバイス部門が占めています。
中国企業が追い上げるなかで事業の再構築を進めていることが見て取れます。

 また、業績が悪くなったとはいえ、日本企業に比べて

サムスン電子の利益水準はまだまだ高い。
そんななかでも、昨年来従業員の賃金凍結や事業再編を進めています。
危機感をもって経営体制の見直しを進めている点を、
低く評価してはいけないと思います。
 ただし今後は、韓国の大企業のなかで、変化に対応できる企業と

できない企業との間で、明暗がはっきり分かれてくるのではないでしょうか。

――韓国経済の現状と課題が、よくわかりました。

最後に、日韓関係をどう見ていますか。
日韓はお互いに、重要なビジネスパートナーの1つです。
足もとで、韓国経済の減速や日韓関係の悪化が
両国の経済に与えている影響は、どうなっているのでしょうか。

 ドルベースで見た韓国の対日貿易額は、2012~2014年にかけ、

3年連続で減少しています。2014年は前年比でマイナス9.2%になりました。
対日輸出が減っているのは為替や両国関係の悪化の影響ですが、
不思議なのは普通なら円安ウォン高の中で増えてもおかしくない
対日輸入まで減っていることです。
これは韓国の輸出が伸び悩んだため、日本からの生産財の輸入が
減少したためと考えられます。
 また、日本人の韓国訪問客も激減しています。

前年比二桁減が続き、回復の兆しはみられません。
日韓関係の悪化に加え、円安・ウォン高が進んだことで、
日本から韓国へ観光や買い物に行く魅力が薄れています。
 対韓投資は、2013年、14年と前年比マイナスになりました。

2012年に急増した反動と、超円高が是正され、韓国投資のメリットが
以前より低下したためだと思います。

――こうした日韓の冷え込みが解消されれば、

韓国経済にもある程度プラスになるのではないか。
今後、日本と韓国が経済面で協力し、
お互いに発展して行く絵図は描けないものでしょうか。

 日韓EPA交渉が中断されたまま再開できない状態が続く一方、

韓国政府は中国とFTAの交渉を進め、昨年事実上合意しました。
中身を見ると自由化の水準は低いのですが、合意に達したこと自体には
意味があります。また、最近になり中国が主導して設立するAIIBへの参加を
決定しています。アジア地域で中国の重要性が増しており、
韓国がその点を踏まえた外交を展開しているといえます。
歴史認識をめぐる問題で日韓の溝が 少しでも埋まらない限り、
政府レベルでの関係改善は厳しいと思います。

 こうした日韓関係の現状を憂慮しているのが、日本の経済界です。

昨年末に経団連の榊原定征会長が、韓国の全国経済人連合会のトップと
7年ぶりに会い、関係の緊密化を再確認するとともに、
政府に対して首脳会談の早期実現を求めました。
このような経済界の動きを見る と、経済関係に関しては、
過度に悲観する必要はないと考えています。

 ただ、以前から韓国とのパイプを持ち続けてきた大企業はよいのですが、

そういうパイプをもたない中小企業のなかには、関係の冷え込みから
韓国での事業に二の足を踏むところも出ている点は注意が必要です。

 そもそも、日韓のビジネス上のつながりは、

両国の国民から見えにくいのも事実です。
韓国が日本から輸入するものの多くは生産財で、
韓国企業が自社製品の生産に使う部品や機械を
日本から多く輸入しても、韓国人の目に直接触れることはありません。
また日本人にとって も、韓国からの輸入品で日頃よく目にするのは、
食品やスマホなどごく一部に過ぎない。
メモリや自動車部品なども多く輸入されていますが、
最終製品のなかに組み込まれています。
このように、両国の国民が、相互に重要なパートナーであることを
認識しづらいのではないでしょうか。
重要性を伝えていく取り組みが必 要だと思います。
まだ経済の潜在能力はある


「最強韓国」は蘇るのか?
 

――「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げた韓国は、
1990年 代にデフォルトの危機に陥り
IMFの管理下に置かれましたが、
2000年代に大企業が世界市場で台頭し、一時は
「最強」と呼ばれるまでになりました。
韓国経済のこうした歴史の中で、
現状はどのような段階にあるのでしょうか。
かつてない危機なのか、それとももう一段成長するための
通過点に過ぎないのでしょうか。

 韓国は短期間で急速に成長を遂げ、今や日本と並んでアジアをリードする

先進国の1つになりました。
日本の後を追って発展してきた韓国が次の段階にいけるかどうか、
いまその正念場を迎えていると考えています。

 若者の就職難に象徴されるように、優秀な人材が十分に活用されていません。

しかし、このことは同時に潜在力があることを示しています。
現在必要なことは、大企業の革新とベンチャー・
中小企業の成長を推進することにより、
質の高い雇用を生み出していくことです。


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