慰安婦問題について、いろんな報道: 鈴置高史、ルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いた韓国 木村幹教授と韓国の「右往左往」を読む(1)。蟻地獄の中でもがく韓国 「南シナ海」を踏み絵として突きつけたオバマ。大陸と付き合ってろくなことはない。 ニューノーマルになった日本人の「韓国嫌い」 <特別編>連載150回を振り返る(2)(1)

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2015年10月29日木曜日

鈴置高史、ルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いた韓国 木村幹教授と韓国の「右往左往」を読む(1)。蟻地獄の中でもがく韓国 「南シナ海」を踏み絵として突きつけたオバマ。大陸と付き合ってろくなことはない。 ニューノーマルになった日本人の「韓国嫌い」 <特別編>連載150回を振り返る(2)(1)

「早読み 深読み 朝鮮半島」

 10月16日、ホワイトハウスで握手する
オバマ大統領と朴槿恵大統領(写真:AP/アフロ)

ルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いた韓国
木村幹教授と韓国の「右往左往」を読む(1)
鈴置 高史 >バックナンバー
2015年10月29日(木)2 3 4 5
米中間で右往左往する韓国。
迷走の行方を神戸大学大学院の木村幹教授と読む
(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。 

2015年の天安門事件 
木村:9月3日の“天安門事件”――。
この影響は予想外に大きかったと思います。
軍事パレードを参観した朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は、
習近平主席、プーチン大統領と北京・天安門の楼上に並びました。

楼に上がったのはほとんどが、米欧や日本の目から見れば、
民主主義的とは言い難い国のトップ。
いわゆる旧西側の首脳は一切、参加しない中で、
韓国だけが大統領を送った形になりました。

 中ロ韓首脳のスリーショット映像は

米国の専門家にも大きなショックを与えました。
彼らの意識に「韓国の中国傾斜」という印象を焼き付ける結果になりました。

 米韓首脳会談(10月16日)の直前、

私はカーネギー平和財団
 (Carnegie Endowment for International Peace)の
シンポジウムに参加するためワシントンを訪れました。
 討論の場で、あるいはその前後の非公式な場で、

米国の外交専門家が韓国の専門家に対し
「いったい、朴槿恵政権は中国をどう考えているのか」と
問い詰めるのを何度も目撃しました。 
米国の専門家はそれぞれの組織で
 「中韓関係はどうなっているのか?」という宿題を貰っていて、
レポートを上げなくてはならない状態になっているのかな、
と思ってしまう雰囲気でした。 

「傾中論」を避けたい韓国

鈴置:米国側の追及に対し、
     韓国の専門家はどう答えましたか?

木村:「中国だけではなく、もっと幅広に話したい」と
話を変えようとした政府関係者がいました。
「韓国は米中どちらの味方か」というテーマが
論点になるのを防ぎたかったのでしょう。
 また韓国からの参加者は口を揃えて
「我が国は戦略面では中国に依存する考えはありません。
基軸は米韓同盟です」と語りました。
「ここは絶対に突っ込まれるだろう」と予想し、
韓国側で模範解答を用意していた感じです。
 そして韓国の出席者は次第に「統一」に話を持っていきます。
しかしここで、一転して「北朝鮮との関係で
中国の影響力に大いに期待しています」と述べてしまいます。
 戦略的に中国に大きく依存していると告白しているも同然で、
少し前の発言と完全に矛盾してしまっているのです。
思わず苦笑しながら聞いていました。

鈴置:シンポジウムの場で、
米国側は統一なり北朝鮮の話題に応じましたか?

ワシントンが突きつける踏み絵
木村:韓国人が声を合わせて「統一」を語っても、
米国人はあまり乗ってきませんでした。
もっとも、韓国の立場に理解を示す人も少数ですがいました。
 例えば、一緒に壇上に上がった1人が朝鮮半島専門家の
ヴィクター・チャ(Victor Cha)ジョージタウン大学教授です。
彼は「韓国が北朝鮮問題で中国を頼るようになったのは、
ある程度自然で理解できる」と説明していました。
 ただ日本、中国でもそうですが今、米国でも
北朝鮮問題への関心は薄らいでいます。
だからこそ、余計に中韓関係が浮かび上がってしまい
「そんなことよりも、
中国そのものにどう向き合うのか」という問いが、
繰り返し韓国に突きつけられることになりました。
 一言で言えば、
ワシントンを訪れる韓国の外交関係者は
「中国にどう接するのだ」と踏み絵を踏まされている感じです。

鈴置:朴槿恵大統領だって、オバマ(Barack Obama)大統領から
「南シナ海」という踏み絵を突きつけられてしまいました
(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

木村:もちろん、私が参加したシンポジウムを主催した
カーネギー平和財団には、対中ハードライナーが多いため
韓国に対してもきつめの姿勢になりがちだった、とは思います。
 しかし、その直後の米韓首脳会談の結果を考えても、
ワシントンの雰囲気を率直に反映していたのは間違いありません。
安倍首相の米議会演説阻止、
日本の世界遺産登録は挙国反対
……韓国の執拗な「終わりなき反日」が続く。
これまで無関心だった日本人も
さすがに首をひねる異様ぶりが際立つ。
事あるごとに日本叩きの共闘を迫られる米国も、

もはや「韓国疲れ」。
「対中包囲網」切り崩しを狙う中国も、日本の懐柔に動き、
韓国は後回し。
国内外で「独り相撲」を繰り広げ、韓国は土俵を転げ落ちた。
「二股外交」破綻の先の「中立化」

そして「核武装」を見据える韓国が招く北東アジアの流動化。
新たな勢力図と日本の取るべき進路を、見通す。
中国に立ち向かう日本、つき従う韓国
中国という蟻地獄に落ちた韓国
「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国
日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 
「三面楚歌」にようやく気づいた韓国
に続く待望のシリーズ第6弾。8月17日発行。

藪蛇の統一論議

鈴置:韓国が今、下手に「統一」を持ち出すと藪蛇です。
“天安門事件”により「中国側に行くつもりか」と
米国に叱られると韓国は恐れました。
 そこで必死で考え出した言い訳が
「軍事パレード参観は中国との緊密な協力の布石であり、
ひいては統一のためである」です。
つまり「対中接近はやむを得ない」という理屈です。
 でも、米国にこう弁解するほどに
「戦略的にあなたより中国の方を頼りにしています」
と語ってしまうことになります。
木村先生も指摘したように、自縄自縛の言い訳です
(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

韓国観察者は以下のように考えます。
そもそも、韓国の中で「統一熱」が高まっているわけでもない。
北朝鮮の金正恩体制は盤石ではないかもしれないけれど、
すぐに倒れるようには見えない。
だのに突然、朴槿恵政権が「統一」を世界で訴え始めた。
統一問題を話し合う、米中韓の公式的な会議を開こうとも
水面下で提案しているようだ。
仮に北朝鮮が近い将来に倒れるとしても、
中国を含む関係国が今から集まって
おおっぴらに対策会議を開くわけにもいかない。
となると、朴槿恵政権の動きは「離米従中」の言い訳であろう。
 要は不純な動機を疑われているのです。
韓国内には「求心力を維持するため統一を持ち出した」
との冷ややかな声もあります。

対北政策で迷走する朴槿恵政権
木村:私は鈴置さんほどには韓国を厳しく見ていません(笑)。
外交部やアドバイザーはともかく、
大統領本人は何かしら本気で「統一」を考えているのだと思っています。
大統領の権限が強い国ですから、
彼女の意見が外交政策にストレートに出てくる。
 ただ、それが合理的な政策につながっているか、といえば疑問です。
例えば、朴槿恵政権は北朝鮮に対し人権問題で強硬姿勢を貫いています。
 それはそれである程度筋が通っているのですが、
同時に事実上、北朝鮮の金づるになっている
「開城工業団地」は拡大を続けている。
 結局、韓国は北朝鮮をどうしたらいいのか分からないのでしょう。
対北政策で方向性を完全に見失っているように見えます。

鈴置:米国にとって問題の本質は韓国の不実
――「離米従中」です。
その象徴が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)でした。
米国が在韓米軍に配備しようとしたら、
韓国が中国の顔色を見て事実上、拒否している。

木村:ワシントンの集まりでは、
不思議なほどTHAADが話題になりませんでした。
それ以上に“天安門事件”が衝撃だったからと思います。
国際政治の場で、一つのイベントのイメージが
これほど大きな意味を持つとは――正直、少し驚きました。

鈴置:THAAD配備拒否だって、よく考えればひどい話です。
韓国を守っている在韓米軍が、我が身を守ろうと
新鋭武器の配備を計画したら韓国が反対するのですから。

東南アジアへのドミノ
木村:でも、それは「よく考えれば」の話です。
天安門楼上のスリーショット画像を見た人は、難しい話なしに
「ああ、韓国は米国よりも中国と仲良くなったのだな」
「それに米国は怒らなくなったのだなあ」と思いますからね。
 とりわけ韓国政治の専門家ではない普通の政治家や外交官
――実は彼らこそが各国の外交方針を決めているわけですが
――からすれば「どうしてこんなことになったんだ」
と思わざるを得なかったでしょう。
 ともあれこの“天安門事件”の画像は、
世界に強烈なメッセージを発しました。
例えば、東南アジアです。
 東南アジアの首脳は、
ほとんど今回の軍事パレードを参観しませんでした。
でも将来、中国から軍事パレードに招かれたら、
この映像を思い出すだろうと思います。
 そして
「そう言えば、米国にあれだけ世話になっている韓国だって参観したのだ。
自分が行っても問題ないに違いない」と考えるでしょう。
 つまり、“天安門事件”は米中の間で惑っていた国をして、
中国の方に行きやすくしてしまったことになります。
米国はこうした悪影響を懸念していると思います
 冷戦時代の言葉を使えば、「ドミノ現象」ですね。
韓国というドミノが中国側に倒れたので、
他の国も続いて倒れてしまうかもしれない。
 その意味では日本から見る以上に、
韓国の国際社会での影響力は大きい。
米中間で惑うアジアの国々の中では、
米国とは朝鮮戦争で助けてもらって以来の長い同盟関係を持つ。
経済力でもG20の1つに名を連ねるくらいの力を持っていますからね。

敵チームにいる韓国
鈴置:東南アジアをはじめ、北朝鮮と敵対しない国にとって
THAADは専門的で、実感がわかない話です。
 一方、軍事パレードは抗日戦勝70周年記念式典のメーンイベント。
名分はあくまで「抗日」ですが、
中国の軍事力誇示が本当の狙いでした。
米国を狙う核ミサイルも行進しました。
世界中の人が米国に対する中国の敵意を感じ取りました。
 軍事パレードの直後に「反・朴槿恵」紙のハンギョレが
「米国の専門家が『ブルーチーム(味方)にいるべき人が
レッドチーム(敵方)にいる』と語った」と報じました。
朴大統領の軍事パレード参観が内心不快な米国
(9月4日、韓国語版)の一節です。
 すべてではないにしろ、米国の専門家は
「韓国は中国――敵方に回った」と見なしたのです。
この記事の見出しは「米国は内心不快」でしたが、
木村幹先生のお話によれば「内心」どころではないのですね。

気がついたら中国の岸
早読み 深読み 朝鮮半島」で1年3カ月前に掲載した、
木村先生と鈴置さんの対談の見出しは
ルビコン河で溺れる韓国」(2014年7月10日)でした。
鈴置:その時、木村先生は「韓国はついに
ルビコン河の米国側の岸から中国を目がけ飛び込んだ」と例えました。
ただ当時は
「まだ、中国側の岸にはたどり着いていない」とのお見立てでした。
そして鈴置さんが「ルビコン河という急流で、
泳ぐというよりも溺れている感じですね」と言ったので、
この見出しを付けたのです。

木村: 今や、韓国はルビコン河の急流に押し流され、
気がついたら中国側に打ち上げられてしまった感じ――です。

保守派も中国に軸足
ついに、木村先生も
中国側へ行ったとの「判定」を下されたのですね。
木村:ええ。政府の判断や政策もですが、
とりわけ韓国の人々の意識です。彼らが米国よりも
中国をはるかに重要視しているのはもはや誰にも否定できません。
 ソウルの書店に並んでいるのは中国関係の本ばかり。
日本関係の本が少ないのはすでに常識ですが、
米国との関係に関わるものと比べても圧倒的に「中国本」が多い。
 長い間、親米派の中軸を務めてきた韓国の保守派も
「中国側に行くのはやめて、米国側に戻ろう」と言わなくなってきている。
 もう少し正確に言えば、彼らは「米国との関係は重要だ」とは言います。
が、彼らでさえ「中国側に片足を置く」のはもはや大前提で
「米国にも片足をかけないといけない」と言っているに過ぎない。
 しかも、重心は中国側にかかっている。
だから、自らが汗をかいて米国へと舵を戻そうとはもはや考えない。
ほんの1、2年前と比べ、明らかに韓国人の心象風景が変わりました。

趙甲済ドットコムは千早城
鈴置:朴槿恵政権の「離米従中」が進むほどに、
保守は反発しながらも、
やむを得ない現実として受け入れてきた感じです。
 生き残った少数の親米派は、
趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコム未来韓国(ミレー・ハングッ)など、
読者数のあまり多くないウェブサイトに立てこもって、
孤軍奮闘している感じです。
 1本の記事の読者数は多くて4桁。
1000人以下の記事も目立つ。
数少ない親米保守の牙城として日本や米国の研究者も
どっと見に行っていますから、実際の韓国人読者はもっと少ないでしょう。
これらのサイトを開くたびに、楠木正成の千早城を思い出してしまいます。

木村:ワシントンの会議でも、米国人から「次の政権になったら
韓国はこちら側に戻ってくると思うか」と聞かれました。
韓国からの参加者ではなく、日本人の私に尋ねるのも面白いですよね。
 米国の専門家も
「もはや韓国人に中国傾斜の問題を聞いても、
ちゃんとした答えが返ってくるとは期待できない」と
感じているのかもしれません。
鈴置:同じ質問を私も欧米の研究者らから受けるようになりました。
「離米従中」の現実を否認できなくなった韓国人が、
新たな弁解として「朴槿恵政権の特殊性」を
あちこちで言い始めたこともあるようです。

政権交代しても米側には戻らない

鈴置さんはそんな質問にどう答えるのですか?
鈴置:確かに「離米従中」は朴槿恵政権で一気に加速した。
しかし、それは構造的な動きである。
政権が代わっても韓国の立ち位置は戻らない――と答えます。
ともに中華帝国を構成した歴史、
韓国人の中国への恐怖感などを理由に挙げます。
 英語で説明するのが面倒な時は
「カーネギー平和財団での
木村先生のスピーチを視聴するといい」と言うことにしています。
 同じ「構造論」でも私とは異なる視点
――経済的依存度や海軍力の差からの説明ですが、
論旨も英語も明快です
(「Japan-Korea Relations: Fifty Years and Beyond」参照。
木村教授のスピーチは開始後10分00秒から)。

木村:日本人には分かりやすく、
ネイティヴにとってはつらい英語だったらしいですけれど……。
鈴置:韓国が「ルビコン河を戻れない」もう1つの理由は「歯止め効果」です。
「米中星取表」で明らかなように、
韓国は完璧に中国の指示通りに動くようになりました。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、
△は現時点での優勢を示す。2015年10月28日現在)


次の政権が「後戻り」するのを、中国が許すとはとても思えません。

「韓国を従わせる」のはもはや中国の既得権になったからです。
 仮に相当に親米的な政権が韓国に生まれても、
中国の脅しに抗するほどの指導力は発揮できないでしょう。

TPPで大騒ぎ
木村:その点は同感ですね。そもそも中国からの圧力がなくても、
韓国人は「逆戻り」を考えないでしょう。先ほど説明したように、
保守派でさえ
「中国との関係が国の立ち位置の基本」と考え始めているからです。
 進歩派の野党はもともと対中関係重視なので、
保守派の与党と合わせて、
どちらも中国との関係を重視しているわけです。
外交関係について与野党が一致している以上、
政権交代があっても対中関係が変わる余地はありません。
 ただ、米国が主導したTPP(環太平洋経済連携協定)に関しては、
労働組合や農民を意識して
進歩派は参加に消極的になる可能性もあります。
しかし、総じて言えば軸足は中国側にあります。

韓国の新聞はTPPで乗り遅れた、と大騒ぎしたようですが。

鈴置:政府の責任だ。一刻も早く加盟しよう、とすごい騒ぎでした。
異様です。TPPの創立メンバーのうち、
日本以外のほとんどの国と韓国はFTA(自由貿易協定)を結んでいます。
入らなくてもさほど不利にはならない。
 逆に、これから入るには日本の要求をのまねばなりません。
日本が日本製乗用車の8%の関税をゼロにしろ、と要求するのは確実です。
入ったら韓国は損なのです。
そもそも韓国は、それゆえにTPP加盟に動かなかったのです。

嫌いな子を大事にする米国
木村:あの騒ぎ方は、
今の韓国の立ち位置と発想を象徴していると思います。
メディアが批判した理由は
「米国が主軸の同盟に乗り遅れた」ということよりも
「日本との競争に負ける」というのが主でした。
米国の 関係よりも、日本との競争関係の方が
今の彼らには分かりやすいんでしょうね。
 こういう時に、韓国の人たちがイメージしているのは、
経済面だけではありません。
「TPPにより米韓の間に溝ができた。よく見ると、
その溝に日本がちゃっかりと入り込んでいる。
日本はずるい」という心情です。


韓国は米国から離れようとしているのに、
悔しいのですか?
木村:米国は自分が捨てようとしているボーイフレンド。
若くて逞しい新しい中国というボーイフレンドができたので、
ある程度、昔のボーイフレンドとの関係は
――進んで喧嘩はしたくないけれど
――心のどこかでは諦めつつある。
 でも、その彼が他の女の子、ことに自分が
一番嫌っている女の子である日本を大事にするのを見ると、
これはこれで面白くない。だからなのですね。
韓国紙は朴槿恵大統領が直談判した結果、
オバマ大統領から
「TPP加盟を歓迎する」との言質を得た、とうれしそうに書いていました。
「米国が日本だけを大事にしているわけではない」証拠が欲しいわけだ。

韓国政府のミスリード

鈴置:それは韓国政府のミスリードです。
韓国経済新聞は社説
対米外交、重大危機に直面したのではないか
(10月19日、韓国語版)で
「TPPに関し、米国側から
肯定的な回答はなかったとみるべきだ」と指摘しています。
 なお、この社説は中央日報の日本語版(10月20日)にも
韓国の対米外交、重大危機に直面したのではないか
の見出しで転載されています。
 実際、オバマ大統領は会見でTPPには一切触れませんでした。
そんな希望観測的なミスリードを
韓国政府がしなければいけないこと自体、
木村先生の「嫉妬理論」を証明することになるのですけれど。
 韓国のTPP加盟を米国は素直に歓迎できません。
理由は2つあります。まず、既に結んだ米韓FTAのメリットが
米国にはさほどなかったとの不満です。
 米産業界からは「韓国がTPPに加盟したいというならまず、
FTAのルールをきちんと守らせろ」
「ウォンの低め誘導をやめさせろ」との声が上がっています。
 もう1つは、韓国の加盟を歓迎すると、
恥をかく可能性が高いからです。
中国が韓国のTPP加盟を許すでしょうか?

米中星取表で新たな黒星
木村:許さないかもしれませんね。
鈴置:交渉の妥結直後にオバマ大統領は、
中国に国際社会の主導権を握らせないのが
TPPの目的であるとはっきりと語りました
(「Statement by the President on the Trans-Pacific Partnership」参照)。
中国が現状の経済システムのままで参加するのはほぼ不可能でもあります。
満天下で敵視された中国は韓国に対し水面下で、
ひょっとするとおおっぴらに「TPPに入るな」と命じるのではないかと思います。
 その際、韓国が中国の反対を押し切って加盟するなんて、
とてもできないでしょう。
韓国人に聞いても「絶対に無理です」との答えが多い。

分かりました。
もし、その前に米国が「歓迎する」と言っていたら
「米中星取表」で、また新たな黒星がついてしまいますね。
鈴置:その通りです。だから米国は
「韓国を歓迎する」と表明しない方がいいのです。

韓中は一緒に行動する
木村:朴槿恵大統領の今回の上海訪問が象徴的でした。
北京で抗日式典に参加した翌日、
史上最大規模の財界の代表団とともに上海入りしました。
それも上海株式が暴落し、
人民元が切り下げられた直後の出来事でした。
 米国や日本が中国への投資を減らす中、韓国は増やしている。
韓国の経済専門家に
「中国にそんなに突っ込んで大丈夫ですか」と聞くと
「中国経済が悪くなるからといって、
他に行くところはない」と答える人が多い。
中国傾斜の慣性がついて、止まらないのです。
それ以外のオ プションが浮かばなくなっている。
 それにも関連し興味深いのは、韓国のメディアも学者も
「韓国と中国が排除されたTPP」という表現を使うことです。
もう大前提として「韓中は一緒に行動する」ことになっているわけです。
 落ち目の米国と日本が、
アジアのいくつかの国と何やらごそごそやっている。
自分は昇り竜の国と組んでいるから関係ないと思っていた。
でも、隣の部屋からTPPパーティの楽しそうな歓声が聞こえてくる。
 中国との関係がややこしくなるので、
米国が構想した反中同盟に加盟するつもりはなかった。
でも、いざ入らないとなると、
さすがに不安と寂しさがこみ上げてくる。
豪州やベトナムまでがメンバーとなった集まりに、
自分の席はないのですから。
 「しまった。何の気なしに渡った河はルビコン河だったようだ。
でも、自分はもう渡ってしまった。
今さら戻れない――」
といった思いが韓国にはあるのです。

中国のマインドコントロール
 朴槿恵大統領の軍事パレード参観が、
米国にとって時代の変わり目を実感する
天安門での“事件”だったとするなら、
韓国にとってこれは“TPP事件”だったのです。
目の前にくっきりと線を引かれて初めて、
自分が「向こう側」にいることを実感した。
 韓国人が使うようになった「韓国は中国と一緒」との表現は、
その不安を打ち消す呪文なのかもしれません。
「中国と一緒にいれば大丈夫だ」と思いたいのです。
鈴置:TPP、天安門、THAAD、
それにAIIB(アジアインフラ投資銀行)――。
韓国は米国との絆を断つ決断を1つずつ下してきました。
 そのたびに韓国人は「もう、米国側には戻れない」
との覚悟と同時に
「自分は中国陣営の有力メンバーだ」との自覚を高めたのです。
 「米国離れ」させるための巧妙な仕掛けをいくつも作り、
韓国人をマインドコントロールしてきた中国。
次は「米韓同盟」で仕掛けるでしょう。

ここにきて「南シナ海」から目が離せません。
(次回=10月30日公開予定 に続く)

蟻地獄の中でもがく韓国 
「南シナ海」を踏み絵として突きつけたオバマ
鈴置高史  >>バックナンバー  2015年10月22日(木)3 4 5
韓国は中国という蟻地獄の中でもがく。
しかし、もがくほどに砂の壁は崩れ、アリジゴクの待つ底に落ちていく。

反対しないと敵と見なす

10月16日にワシントンで米韓首脳会談が開かれました。
どう見ますか?
鈴置:首脳会談で朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は
オバ マ(Barack Obama)大統領から贈り物を貰いました。
でも、その箱には踏み絵が入っていました。
朴槿恵大統領は怒って、踏み絵を投げ返すかもしれません。
米韓関係 は改善するどころか、
一気に悪化する可能性が出てきました。


韓国各紙は
「米国から『韓国は中国に傾斜していない』とのお墨付きを貰った」と
特筆大書し、朴槿恵大統領の訪米の大きな成果と称賛しました。
鈴置:そんなお墨付きを貰うことが
首脳会談の目的になってしまったのも奇妙な話なのですが、
それは横に置きます。
韓国政府は米国から「中国に傾斜していない」とのお言葉を欲しがっていた。
それを証明するための写真もです。
 そしてオバマ大統領は会談後の共同記者会見で
「韓国が中国とよい関係を結ぶのは結構なことだ」と言ってくれました。
朴槿恵大統領はペンタゴンで儀仗兵の閲兵もやらせてもらい、
その写真を世界に発信できました。
 「対中傾斜していないと認証する」と表書きした引き出物を
オバマ大統領から貰えたのです。
でも、朴槿恵大統領がいそいそと箱を開けると中には
「南シナ海」と書いた踏み絵が入っていた……。
 「韓国が中国側の国でないというのなら、
中国による南シナ海の軍事基地化に反対しろ。
しないと敵方と見なす」との警告です。

中国は国際ルールを守れ
 会談後の共同記者会見で、
オバマ大統領は以下のように語りました。
Remarks by President Obama and 
 President Park of the Republic of Korea 
in Joint Press Conference」
(10月16日、英語)を要約しながら翻訳します。
(米韓同盟に亀裂が入っているのではないか、
との質問に答えて)いかなる亀裂も入っていない。
米韓同盟は過去のどんな時よりも強固だ。
朴大統領が習近平主席に会うと、

何か我々に不都合であるかのような見方がある。
でも、習主席は
(米中首脳会談のために)この部屋を訪れ、
私の出したご飯も食べた(笑い)。
米国がそうであるように、韓国も
中国との強固な関係を持つことを我々は望んでいる。
朴大統領にも伝えたのだが、ひとつだけ、

中国に言い続けねばならぬことがある。
それは中国が国際的な規範とルールに従うことだ
もし中国がそうしない時には、韓国が我々と同様に
しっかりと声を上げて批判することを望む。
なぜなら、米韓両国は第2次世界大戦の後から続いてきた

国際的な規範とルールに恩恵を被ってきたからだ。
 「南シナ海」と名指ししていませんが、
それ以外の何物でもありません。
共同会見の場で、
すぐ横に立つ首脳に注文を付けるのは異様です。
第3国を名指しして批判するのも異例です。
中国と対決するオバマ政権の決意を示すものでしょう。

もう、見過ごせない

なぜ、突然に「南シナ海」なのですか?
鈴置東南アジアの関連国や米国、日本の反対を無視し、
中国は南シナ海で埋め立てを進めてきました。
しかし、オバマ政権は口頭で反対するだけで、
積極的に対応してこなかった。
米国の弱腰をいいことに、中国は滑走路も完成するなど
軍事基地化を着々と進めています。
 米国の保守派と軍は
「これ以上見過ごすべきではない」と声を強めました。
具体的には埋め立て現場の12カイリ内
――中国が領海と主張する海域に艦艇を派遣し、
軍事基地化を認めない姿勢をはっきりと打ち出すべきだと主張したのです。
 東南アジアの関連国も米国、日本も、埋め立て海域を
中国の領土・領海とは認めていません。
仮に領海であっても、無害通航するなら軍艦を送っても
法的な問題は全くないのです。
が、オバマ政権はそれさえしていなかった。
今秋になってようやく、決断したのです

逃げ回る韓国

本当に米国はその海域に艦艇を送るのですか?
鈴置:偶然ですが、米韓首脳会談の少し前に
オバマ政権は艦艇派遣を決意したようです。
日本の安全保障関係者がそう語っています。
 一方、韓国はその問題から逃げ回ってきた。
「中国の埋め立てに反対しろ」と米国から何度言われても、
中国の顔色を見て知らない顔をしているのです。
 6月にワシントンポスト(WP)紙のインタビューを受けた
朴槿恵大統領は南シナ海問題に関し、以下のように答えました。
(「思考停止の韓国」参照)。

中国は韓国の最大の貿易相手国だ。
そして朝鮮半島の平和と安定に巨大な役割を果たす。
南シナ海に関し、韓国にとっても航行の安全と自由はとても大事だ。
我が国はこの海域の展開を、関心を持って見守っている。
状況の悪化を望まない。

 韓国は
「関心を持って見守る」が
「最大の貿易相手の中国には何も言わない」
――つまり米中間では中立を保つということです。
こんな韓国に対し、米国はいらだちを強めていました。
 そしてついに今回の首脳会談で、オバマ大統領自らが
朴槿恵大統領に中国の埋め立てや
軍事基地化に反対するよう求めたのです。
わざわざ会見でも言及したのは、中国に警告すると同時に、
韓国への圧力を狙ったと受け止められています。

米中板挟み

首脳会談で朴槿恵大統領は
「中国の軍事基地化に反対する」意向を表明したのでしょうか。
鈴置:しなかったと思います。
もし「韓国も反対する」と約束したのなら、
共同会見でオバマ大統領は未練がましく言及しなかったはずです。
韓国各紙も「オバマから宿題を渡された」
――つまり「反対を約束しなかった」との前提で書いています。
 「米中星取表」を見れば分かるように、
中国には「NO」を言えないのが韓国です。
相場観から言えば、いくら米国の大統領から要求されても、
中国批判はできないと見るのが普通です。

頭を抱える朝鮮日報

他の新聞もそう書いたのですか。
鈴置:私が見た限り大手紙の中では、東亜日報だけが「親米的」でした。
最大手紙で保守系の朝鮮日報は結論を下さず、
韓国人に覚悟を要求するものでした。
 10月19日付社説
米中の間で選択を強要される状況に備えよ
(韓国語版)の結論部分は以下です。
もし、東シナ海の問題で韓国が米国の要請を受け入れ、
中国に批判的な態度を取った場合、
中国との関係が悪化するのは火を見るよりも明らかだ。
この 問題が東シナ海の尖閣諸島の領有権問題や、
米中による防空識別圏問題に飛び火する可能性も考えられる。
米国、中国、日本による勢力争いを人ごとと考える余裕などない。
青瓦台(大統領府)は今回の朴大統領の訪米について

「『中国傾斜論』を払拭し、
韓国の立場を固めるきっかけになった」と自画自賛する。
しかし中国傾斜論への警戒を緩和することは実は本質的な問題ではない。
米中対立が現実のものとなった場合、

韓国がいかなる論理をもってどう行動すべきかを
改めて根本から検討し、
国家としての戦略を明確にする必要があるという事実が、
今回の朴大統領の米国訪問で突き付けられたのだ。
韓国は核問題と統一問題のいずれにおいても

米国、中国双方と協力していかねばならない。
北朝鮮と中国に不信の目を向ける米国、
そして北朝鮮を擁護する中国との間でどのような立場を取るべきか。
韓国が抱える大きな宿題だ。
 政府や国民に覚悟を求めながら自分の意見は言わない。
白黒をはっきりするのが好きな韓国紙らしからぬ曖昧な社説です。
米中板挟みの中で
「どう書けばいいのか」と頭を抱える論説委員氏の姿が目に浮かびます。

「離米従中」の中央日報
 朴槿恵政権に最も近いと見なされる中央日報の社説
成果ほど課題も抱えた韓米首脳会談」(10月19日、日本語版)は
「ますます重要になる中国の重みを考えると、
南シナ海での過ちを指摘するのは難しい」と結論部分で書きました。
 消極的ながら「傾中」
――韓国人の嫌いな言葉を使って、
もっとはっきり言えば「離米従中」を主張したのです。


南シナ海で米中間の緊張が高まった際に、
韓国はどちら側に立つのでしょうか?
鈴置:まだ、分かりません。先に見たように、
保守系紙は「親米」「離米」と意見が割れています。
 ハンギョレ、キョンヒャン新聞など左派系紙は「右往左往する
朴槿恵外交」と政権の無能ぶりを批判。
さらには「韓米日の反中軍事同盟に巻き込まれる危険性」を指摘します。
ただ、明示的に「南シナ海で中国側に立つべきだ」とは書いていません。

「米国からお墨付きを貰った」
などと喜んでいる状況ではないのですね、韓国は。
鈴置:全くそうです。「南シナ海」で韓国は板挟みに陥りました。
反対しないと米国から敵側に見なされる。
逆に米国の要求に応じて対中批判に加わったら、
今度は中国からしっぺ返しを食らうでしょう。

親米打ち出す東亜日報

完全な板挟みですね。
鈴置:それもすぐさま、
どちらに付くか決めねばならない状況に陥ったのです。
近々、米中が南シナ海で衝突する、
あるいはそれに近い状況に突入する可能性が増しているからです。
 韓国は様々の案件で米中板挟みに陥っています。
アジアインフラ開発銀行(AIIB)では米国の不興を買いました。
でも、それは終わってしまった話です。
THAAD(終末高高度防衛ミサイル)は先送りが可能で、
なんとか誤魔化している。
 それらに比べ「南シナ海」は緊急性が高い。
だから韓国各紙は休刊日明けの10月19日の社説で、
一斉に「南シナ海で苦境に陥った韓国」を取り上げたのです。
 東亜日報(日本語版)の社説
『中国に言うべき事は言わないと』と迫るオバマ大統領、
朴大統領は準備ができているのか」が代表的なものです。
結論部分が以下です。
米国は、韓国が日本のように中国への牽制に

躊躇することなく賛同する確かな価値を共有する同盟なのか、
中国を意識してあいまいな態度を取るのか問うている。
朴大統領の親中の振る舞いは

現実的に国益の次元で避けられない面もあるが、
そのために米国との関係が疎遠になる選択をしてはならない。
 東亜日報は腰が引けながらも「米国側に立とう」と主張したのです。
なお、同紙はほかの保守系紙と比べ、
政権とやや距離を置いた主張が目立ちます。

親米5割、親中4割弱
 国民は7月末時点で、ざっくり言って米国支持派が5割、
中国支持派が4割弱という数字が出ています
(グラフ「米中どちらが重要か」参照)。


グラフ●米中どちらが重要か
 世論調査機関、リアルメーターによると
「韓国にとって政治、経済、国防、歴史的に
米中どちらが重要な国か」との質問に対し
「米国」と答えた人が50.6%、「中国」と答えた人が37.9%いました。
9月3日、天安門の壇上で演説する習近平主席。
向かってその右下にロシアのプーチン大統領、
左下にはカザフスタンのナザルバエフ大統領。
3人に取り囲まれるように座る朴槿恵大統領(写真:ロイター/アフロ)
 朴槿恵大統領が訪中し、
天安門の楼上で軍事パレードを参観する前のデータです。
この後に大統領への支持率が上がったことを勘案すると
「中国派」がさらに増えているかもしれません。
 朴槿恵政権は韓国人の平均以上に「親中的」と見なされています。
引用した東亜日報の社説には以下のくだりもあります。

朴大統領の外交政策を樹立・執行する

尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官、韓民求(ハン・ミング)国防長官、
金寛鎮(キム・グァンジン)大統領安保室長、
朱鉄基(チュ・チョルギ)大統領外交安保首席補佐官らが
補佐を十分にできていない責任もあるのか問わなければならない。
これまでの外交安保政策を政権後半にも持続するのか、

中間点検をする必要がある。
政策の修正・補完や人事改編が必要なら、機を失してはならない。
 このままだと親中的な大統領周辺が、
我が国を一気に中国側に持っていくことになりかねない
――との恐怖感がにじみ出ています。

藪蛇になった「統一」
 確かに南シナ海の踏み絵を期に、韓国が米国との関係を悪化させ、
中国側に行く可能性が高いのです。
今回の米韓首脳会談で朴槿恵政権が「中国に傾斜していない」
とのお墨付きを貰うのに必死になったのも、
国民から「あまりに中国寄りになった」との批判が高まったからです。
 AIIBやTHAADなど、
米中対立案件で韓国はほぼ中国が命じる通りに動いている。
そのうえ、米国が必死で止めた9月3日の抗日式典にも
朴槿恵大統領は参加した(「米中星取表」参照)。
 さすがに韓国政府も
この「従中」ぶりには言い訳が必要と思ったのでしょう。
米国も文句を付けにくい「統一のため」という名分を持ち出しました。
 朴槿恵大統領は中国から戻る機中で
「中国と協力し統一を目指す」と語ったのです
(「統一は中国とスクラム組んで」参照)。
 しかし、これが藪蛇になりました。
「中国頼みで統一する」ことは「米韓同盟を破棄する」
あるいは
「在韓米軍を撤収させる」こととほぼ同じと見なされるからです。
 韓国の親米保守はもちろん、米中二股派も悲鳴を上げました。
米国もますます韓国を疑いました。
そこで朴槿恵政権は“失言”を中和するためにも今回の訪米で、
中国と同様に米国とも北朝鮮問題で
緊密に協力するとの姿勢を打ち出したのです。

新味のない共同声明

「北朝鮮に関する共同声明」ですね。
鈴置:何ら新味のない内容でした。
「韓国は中国一辺倒ではない」と言い張るために出した声明ですから。
 もし、本当に韓国が米国側に戻る意思があるのなら、
首脳会談の場で
「米国の希望通りにTHAADの在韓米軍への配備を認める」と
朴槿恵大統領が宣言すべきでした。
 韓国の中からもそれを求める声が上がっていました。
でも、訪米前から韓国政府は
「米国にTHAADという手土産を持っていくつもりはない」
との趣旨の表明を繰り返しました。
結局、今回も韓国は「まだ米国側にいる」フリをしただけなのです。


それに怒った米国が踏み絵を突きつけた、
というわけですね。
鈴置その通りです。
韓国は米国側に戻る機会
――たぶん最後の機会を逸したと思います。
南シナ海という踏み絵もあり、
後は中国ブロックにずるずると引き込まれていく可能性が高い。

信頼を失った韓国

中国という蟻地獄に落ちた韓国』という本のタイトルを思い出しました。
鈴置:ええ、韓国はもう中国という蟻地獄に落ちました。
何とか這い上がってくるかな、
と思って観察していましたが、そうなりそうもない。
 やることなすこと、完全に中国の言いなり。
それを誤魔化そうと、誰からも見抜かれる言い訳を繰り返す。
その結果、米国や日本からすっかり信頼を失ってしまったのです。
もがくほどに、
アリジゴクの待つすり鉢の底に落ちていくアリの姿そのままです。 

大陸と付き合ってろくなことはない
<特別編>連載150回を振り返る(2)

鈴置 高史  >>バックナンバー
2015年10月16日(金)
前回から読む)
 150回の連載を振り返りながら、
坂巻正伸・日経ビジネス副編集長と日本の「離韓」を先読みした。

絶交論の台頭
坂巻:前回は韓国の卑日攻勢に嫌気した日本人が
「韓国は無視しよう」と言い出したという話で終わりました。
鈴置:絶交論です。
今後、そうした考え方が定着していくのでしょう。
日本人の韓国への不信感は根深い。
近い将来にそれが解消されるとは考えにくい。
 表「韓国の主な『卑日』」や「『安倍演説阻止』に向けた
韓国の動き」を見ると、日本の足を引っ張るために
韓国がどれだけ執拗に動いてきたかが、よく分かります。

日本も米国も「韓国疲れ」
坂巻:ちなみに「早読み 深読み 朝鮮半島」連載の中で、
読者から「とても参考になった」との評価が
目立って多かった回は「これが『卑日』だったのか――」でした。
韓国の「卑日」にいかに日本人が驚き、あきれたかの証拠と思います。
鈴置:日本人は卑日攻勢をかけてくる韓国と付き合うのには疲れ果てました。
ちなみに米国の外交界も、韓国人がやって来ては
「卑日」に加わるよう要求するので「韓国疲れ」
(Korea Fatigue)に陥りました
(「米国の『うんざり』が嫌韓に変わる時」参照)。
坂巻:鈴置さんの近著 『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』の
オビのフレーズを「『終わりなき反日』に世界が疲れている」としました。
でもより正確に言えば「卑日に世界が疲れている」のですね。
 そこで質問です。韓国人はそれに
――「他者を疲れさせている」ことに気づいているのでしょうか。

「俺に疲れてなんかいないだろ?」
鈴置:さほど気にしていないと思います。
天動説の人たちですから。
米国の外交界で「韓国疲れ(Korea Fatigue)」という
単語が語られた2015年春のことです。
 わざわざ米国の識者に「我が国に疲れたか」と聞いた
韓国の有力記者がいます。
そして「そんなことはない」との答えを貰い、
大喜びで「米国人は疲れていない。
『韓国疲れ』なんて大嘘だ」と書いていました。
 「ええ、あなたには疲れています」と面と向かって答える人は、
世の中にあまりいないと思うのですが。
ことに激情的な韓国人に向かって……。
坂巻:「米国が日本の肩ばかり持つ」と怒った韓国人が、
駐韓米大使襲撃事件も起こしましたしね。
鈴置:もう1つ、韓国人が気がついていないことがあります。
「韓国が中国ブロックに引っ越し始めた」と見切った日本は、
韓国を相手にしなくなった。
しかし韓国は見切られ、
無視され始めたことに気づいていないのです。
坂巻:読者の多くも日本の韓国無視
――「離韓」には拍手しているようです。
まさにそれを描いた「『韓国外し』に乗り出した安倍政権」にも
「とても参考になった」との評価が多数、寄せられました。

「慰安婦」でも中韓共闘
鈴置:今までなら韓国が少々不愉快なことをしてきても、
お互い米国を軸とする「海洋同盟」に属していましたから、
日本人は「安全保障のためにも、ここは謝っておこう」と考えもしました。
 でも、韓国は「中国側の国」になり始めたのです。
謝る必要がなくなったどころではなく、下手に謝罪すると、
仮想敵たる中国の新たな対日攻撃の材料を作ってしまうのです。
 典型的な例が「慰安婦」です。
韓国は中国と共闘体制を組みました。
2014年12月15日の聯合ニュース(日本語版)は
韓中政府系機関 慰安婦問題共同研究へ=MOU締結」で
「従軍慰安婦で中韓両国政府は
共同研究する」との覚書を結んだと報じています。
 2015年8月18日、中央日報(日本語版)は
韓国女性2000人一度に徴用…日本軍、料理店とだまし慰安婦強要
で以下のように報じました。

中国黒龍江省档案局(記録保管所)は

当時の満州国の慰安婦関連文献を公開、
1941年10月、日本軍が牡丹江省綏陽県に軍慰安所を開設し、
韓国人女性数十人を慰安婦として強制的に働かせていたと明らかにした。
文献には、日本の国境警察隊の隊長が慰安婦について

「韓国から強制徴用した2000人余りのうちの一部」と説明したとの記載もある。
 "共同研究"の成果がさっそく出てきたわけです。
2015年9月22日にはサンフランシスコ市議会で
「慰安婦碑または像の設置を支持する決議案」の採決が行われ、
全会一致で採択されました。運動の中心となったのは中国系団体です。

日米離間の戦略兵器
坂巻:完全な中韓共闘体制ですね。
最近の韓国紙や日本の新聞は、朴槿恵(パク・クンヘ)政権が
対日強硬路線の修正に動きそうだ、と報じていますが……。
鈴置:米国に怒られないよう、
「強硬路線をやめたふり」をするということでしょう。
先ほど見たように韓国は中国との協力を強化し、
ますます「卑日」に邁進しています。
米国の威を借りて日本を叩くのに失敗したので、
今度は中国の威を借りて日本叩きに全力を挙げているのです。
 そもそも"慰安婦の共同研究"は
2014年7月の中韓首脳会談で合意されたものです。
トップ同士の約束で始まったものが、簡単に止むわけもないのです。
仮に韓国が共闘をやめたくとも中国が許さないでしょう。
 中国にとって「歴史カード」は
日米離間のための貴重な戦略兵器です。
ことに韓国を操り人形にしてこのカードを使うと、
米国のアジアの同盟ネットワークに大きな打撃を与えられます。
 韓国に「悪行を悔い改めない日本」を言い立てさせ、
米国内で日本との同盟強化は危険なものとのムードを作る。
すると日米はもちろん日韓、
ひいては米韓関係も揺さぶることができるのです。
坂巻:10月9日の「南京事件の世界記憶遺産登録」も、
中国に新たな卑日カードを与えることになりました。

「中国側に行くぞ」と脅す韓国人
鈴置:そのユネスコの「記憶遺産」でも中韓共闘が始まりそうです。
聯合ニュースは
世界記憶遺産への『慰安婦』登録 中国が韓国と協力の可能性
(10月12日、日本語版)で、そう報じています。
坂巻:こうした中韓共闘は何とも厄介ですが、
もはや現実には止められない。
そんな状況下「中国側に行きたいなら行かせよう」
「韓国にはこれ以上、関わり合いにならないでおこう」
といった読者の意見が増えています。
鈴置:ほんの数年前までなら、そうした意見は大人げない、
幼稚なものと見なされかねませんでした。
「ここはひとつ、日本が譲って謝っておくべきだ。
韓国をなだめれば中国側に行くのを引き止められるから」
といった"大人の判断"からです。
 実際、今回の「慰安婦」問題の初期には

――2014年ごろまでは「日本が韓国の言うことを聞かないと、
中国側に行くぞ」と脅してくる韓国の学者がいました。
それを受け売りする日本の専門家も相当数いました。
 しかしもう、普通の日本人はその虚構を見破ってしまいました。

韓国の行動を見れば「中国側に行く」どころか、
初めから「中国側の国」なのが明らかになったからです
中国の言いなりになって、韓国を守っている
米国の要請さえ無視するのですから(「米中星取表」参照)。
韓国人は「同じ被害者だから中国と共闘するのだ。
日本にすべての責任がある」とも言い張ります。
ではなぜ、米国が中国を抑え込んでいた間は
中韓共闘を避けていたのだろうか
――と首を傾げる日本人が出てきました。
 講演すると、聴衆からこんな質問が出るようになりました。

韓国の、強い方に付く機会主義や、その手法たる「離米従中」を
日本人も知ったのです。
「韓国は中国の手先だ」とばれてしまったのです。

韓国は必要な国か
坂巻:その結果「韓国は無視しよう」との
読者コメントが溢れかえるようになったのですね。
読者を代表して質問です。
日本にとって韓国は不可欠な国なのでしょうか。
鈴置:それは日本人のハラのくくり方にかかっています。
もちろん、朝鮮半島は日本の安全保障に直結しています。
 大陸の大国である中国、ロシアが南進する時は
必ずこの半島を確保します。
膨張する大陸勢力に備える際、
半島にどう対するか、が重要になるのです。
 これは中国人ら大陸の人々にとっても同じことです。
彼らは「海洋勢力が攻めて来る時は、
必ず半島を通路にする」と警戒しています。
 公平を期すため、韓国の知識人が
しばしば以下のようにこぼすことも語っておかねばなりません。

我々は半島という「廊下」に国を建てている。

ここで寝ていると大陸の連中、あるいは海洋の連中が
我々の頭を踏んで行き来する。はなはだ迷惑である。

 いずれにせよ、19世紀末から20世紀初めにかけての
日清、日露の両戦争は日本が大陸勢力の南進を防ぐために、
朝鮮半島を確保する戦いでした。
 ただ朝鮮半島を我がものとすれば、それを守るために
満洲が欲しくなる。満洲を得れば当然、中国が反発する。
中国と紛争を起こした結果、
米国や一時期は同盟国だった英国とも戦争する羽目に陥った。
これがその後の歴史でした

戦前の轍を踏むな
坂巻:まさに今、膨張する中国が 韓国をのみ込もうとしている。
北朝鮮に対しても、
10月10日の労働党創建70周年の軍事パレードには、
共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員を送るなど 睨みを利かす。
中国の朝鮮半島へのコミットがこれまで以上に深まれば、
日本も傍観しているわけにはいかない……。
鈴置:だけど今度は戦前の轍を踏んではいけない。
半島を含め、アジア大陸に一歩、足を踏み入れれば泥沼に落ち込む
――と日本人は暗黙裡に合意していると私は思います。
 前回、坂巻デスクが指摘した
「対馬が最前線だ。ここで日本を守り切ろう」といった
読者のコメントが増えているのがその証拠です。
 日常的な会話でも
「日本は大陸に関与して失敗した。
今度は距離をとって対応しよう」などと語られるようになっています。
 渡辺利夫・拓殖大学総長が『新脱亜論』で
興味深いエピソードを紹介しておられます。
宮沢喜一内閣当時の話といいますから、1990年代前半のことです。

アジア太平洋問題に関する首相の私的懇談会が設置され、

私も委員の一人に指名された。
第一回の懇談会のゲストスピーカーとして梅棹忠夫氏が出席し た。
「日本が大陸アジアと付き合ってろくなことはない、
というのが私の今日の話の結論です」と話を切り出して、
委員全員が呆気に取られるというシチュエー ションを
私は鮮明に記憶している(272ページ)。

脱亜論と新・脱亜論
 さすがに『文明の生態史観』を書いた梅棹忠夫氏です。
1990年当時の日本は「アジアの時代」という言葉が流行っていました。
米国との通商摩擦に疲れ果て「脱米入亜」に期待する空気も濃かった。
 一方、改革開放政策を採用し
市場経済を導入したばかりの中国はお手本として、
あるいは援助の源泉として日本をおだて上げていました。
今の若い人には想像できないほどに、日中は蜜月時代だったのです。
 そんな時に
「大陸アジアと付き合ってろくなことはない」と言い切るのは、
よほどの確信が要ります。
坂巻:古くは福沢諭吉が『脱亜論』で示した
「大陸とは距離を置く」という考え方。
四半世紀前にも政権に近いところで主張されていたのですね。
読者コメントでも『脱亜論』に言及する人が増えています。
鈴置:その、日本の未来を見据えた貴重な識見は
せっかく「政権に近いところで主張された」というのに、
傾聴されなかったようです。
韓国、そして今や中国までが「慰安婦の強制性を
日本が認めた証拠」として対日攻撃に活用する「河野談話」。
あれは宮沢内閣の時に出されたのです。

中国とは手を携えやっていける
坂巻:……そうでした。
思わず腕組みしてしまいますね。
では「海洋勢力国家として生きよ」と主張する
渡辺利夫先生の『新脱亜論』が出版されたのは、いつですか。
鈴置:2008年5月です。
まだ、公式には中国が姿勢を低くし、強くなるのを待つ
――「韜光養晦」(とうこうようかい)路線を掲げていた最後の時期です。
 すでに南シナ海では露骨な膨張主義に乗り出していましたが、
尖閣諸島など東シナ海では爪を隠していました。
だから日本では「中国とは手を携えてやっていけるし、
そうすべきだ」との考え方が主流だったのです。
 当時は日米FTA(自由貿易協定)よりも日中韓FTAの方が
現実味を帯びて語られていました。
そんな中、この本は「反中本」として受け止められたりもしました。
今では「その通り!」と思う人が多いでしょうが。

海洋国家として生きよう
 渡辺利夫先生は
「梅棹忠夫氏の"不規則発言"」を紹介した後に、
以下のように書いています。
日本はこの戦い(日清、日露の両戦争)に勝利して

後に中国に攻め入り、協調と同盟の関係を築くべき
「海洋勢力」イギリスとの関係を放擲させられ、
もう一つの巨大な海の「島」アメリカと対決して自滅した(272ページ)。
東アジア共同体に日本が加わって「大陸勢力」中国と連携し、

日米の距離を遠くすることは、
日本の近代史の失敗を繰り返すことにならないか。
私が危惧しているのはこのことである。
日米同盟を基軸とし、台湾、東南アジア、インド、
さらにこれにオーストラリア、ニュージーランドを加え、
これらがユーラシ ア大陸を牽制しながら
みずからの生存と繁栄を図るという生き方が
賢明な選択であることを、日本の近代史の成功と失敗は
教えていると私は思うのである (272、273ページ)。
 中国の拡張主義により大陸勢力と海洋勢力が対立を深めています。
日本が海洋国家として生きていくのなら
「大陸側の国になりつつある韓国」と距離を置くのは自然な話なのです。

異なる道を歩き始めた日韓
坂巻:10月5日、日本は米国や「海のアジア諸国」と
TPP(環太平洋経済連携協定)に合意しました。
7年前の渡辺利夫先生の構想通り
"中国牽制同盟"が動き始めました。
鈴置:その少し前、日本は9月19日には安全保障関連法を成立させ、
米国との軍事同盟の強化を鮮明にしました。
これに対し韓国は、中国と声を合わせて懸念を表明しました。
 さらに韓国は抗日式典に参加したうえ、TPPという"
中国牽制同盟"に入りませんでした。
もちろん中国の顔色を見てのことです。
 2015年秋は、日韓が全く異なる道
――海洋国家と大陸国家
――を歩き始めた瞬間として記憶されるでしょう。
坂巻:読者も――日本人も「対馬で守り切る」
ハラを固めることになるのでしょうね。
さて次の注目は、10月16日の米韓首脳会談です。
鈴置:次回、読み解きます。

ニューノーマルになった日本人の「韓国嫌い」
<特別編>連載150回を振り返る(1)
2015年10月15日(木)早読み 深読み 朝鮮半島」が150回を超えた。
偶然にも連載開始と軌を一にして、
日本人の「韓国嫌い」が激しくなった。
坂巻正伸・日経ビジネス副編集長と深読みした。 

なぜ、こんなに居丈高に?
坂巻:前々回の「『ヒトラーと心中した日本』になる韓国」で、
連載150回を記録しました。
初回は2012年1月12日掲載ですから、
3年9カ月も続いていることになります。
鈴置:韓国外交を主要テーマに書いてきましたが、
そんな特殊な話を
飽きもせずに読んでくれる読者がいることは、驚きです。
坂巻:毎回、非常にたくさんの皆さんにお読みいただき、
たくさんのコメントをいただき、感謝しています。
 新たな読者も増えています。
日韓関係にさほど関心を持っていなかった人や
「隣の国だから仲良くした方がいい」と考えていた人が
「なぜ韓国はこれほど居丈高になったのか」
と首を傾げるようになりました。
 この「早読み 深読み 朝鮮半島」は、
そんな人たちが読みに来てくれています。
日本人にとって韓国外交は「特殊な話」ではなくなったのです。

「もっと厳しく書け」
鈴置:韓国は李明博(イ・ミョンバク)政権末期から
露骨な「卑日」政策を取り始めました。
それまでの「反日」とは異なる、執拗な「卑日」に
日本人は大いに驚きました(「これが『卑日』だったのか――」参照)。
 2013年2月にスタートした朴槿恵(パク・クンヘ)政権は
「卑日」に加え「離米従中」も開始しました。
同盟国である米国の要請を無視し、
中国の言うなりに動くようになったのです。
今や、米韓同盟が続いているのが不思議なくらいです。
坂巻:このコラムも「卑日」と「離米従中」が2枚看板です。
読者の反応を見ると、
ここ3年間で日本人の韓国観が急激に悪化したことが分かります。
鈴置:連載を始めた頃、
「韓国とは歴史的な因縁があるのだから、
もっと優しく書いたらどうか」と怒られたことがあります。
先日、この人に会ったら「もっと韓国に厳しく書け。
手加減するな」と言われました。
 180度の様変わりです。
ほかにも同じ方向で変わった人が何人かいまして、
多くが「リベラル」を自認していた人です。
そもそも、優しくとか厳しくとか、
感情で書いているわけではないのですが……。
坂巻:この連載は事実を淡々と深掘りするのがウリです。
韓国への不信感や怒りが"リベラル"にも及んできたということでしょう。

3分の2が「韓国嫌い」に
鈴置:「日本人の韓国への嫌悪」は統計にもはっきりと表れています。
グラフ1「韓国に対する親近感」をご覧下さい。
毎年10月に内閣府が日本人に聞く世論調査
日本と諸外国との関係」の一部です。


グラフ1 韓国に対する親近感
調査主体=内閣府/調査時期=毎年10月
※「親しみを感じる」は「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」の小計、「親しみを感じない」は「親しみを感じない」「どちらかというと親しみを感じない」の小計

 2014年の調査では「親しみを感じる」が31.5%で、
1976年に調査が始まって以来の最低を記録しました。
それまでの過去最低だった1996年の35.8%と比べても
大幅に低い数字です。
 一方「親しみを感じない」は66.4%。
「韓国嫌い」の日本人が3分の2を占めるまでに増えたのです
これまた過去最高で、1996年の60.0%を大きく引き離しています。
 韓国専門家の中には
「今の対韓感情は1965年の国交正常化以来、最悪だ」
と語る人もいれば
「金大中(キム・デジュン)事件(1973年)当時の方が悪かった」
と言う人もいます。
 残念ながら内閣府のこの調査は1978年に始まったので、
どちらが正しいかデータ的な判断はつきません。
 なお、1996年に対韓感情が悪化したのは、
前年の1995年11月14日に、金泳三(キム・ヨンサム)大統領が
「日本の腐った根性を叩き直してやる」と語ったためです。
訪韓した江沢民主席との共同会見の席での発言で、
文字通り、中国の威を借りたものでした。

一時は好感度国になったのに
 しかし21世紀に入ると対韓感情は改善しました。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代にやや悪化したものの、
2009年には「親しみを感じる」が66.5%にまで上昇しています。
「韓流ブーム」の影響です。
 グラフ2の「日韓関係」に関する意識調査も、
ほぼ同じ傾向でアップダウンを示しています。



グラフ2 現在の日本と韓国との関係
調査主体=内閣府/調査時期=毎年10月
※「良好だと思う」は「良好だと思う」「まあ良好だと思う」の小計、
「良好だと思わない」は「良好だと思わない」
「あまり良好だと思わない」の小計
(注)2013年10月調査までは、調査票の選択肢に
「一概にいえない」が明示的に入っていないため、2014年10月調査
 この調査では、内閣府は発表したグラフに2014年の結果を入れていません。
同年から「一概にいえない」との回答を明示的に含めたため
「それまでと単純比較しない」との理由です。
 そこを敢えて比べれば2014年の「良好だと思う」は12.2%。
前年の21.1%から大きく落ちて、過去最低になっています。
2014年の「良好だと思わない」は77.2%で
前年の76.0%からわずかですが増えています。
坂巻:いずれの調査を見ても、
2012年から急激に日本人は「韓国嫌い」になり
「日韓関係は悪い」との認識が一般的になりましたね。

竹島が悪化の原点
鈴置:李明博大統領の突然の「卑日」攻勢が原因です。
まず、大統領は2012年8月10日に竹島に上陸しました。
 4日後の8月14日には
「(天皇は)独立運動家がすべてこの世を去る前に心から謝罪すべきだ。
痛惜の念という単語ひとつで訪ねてくるなら(訪韓は)必要ない」
と語りました。
 「竹島」より、天皇への謝罪要求の方がより大きな怒りを呼んだ、
と見る人もいます。どちらにせよ日本人は、
李明博大統領の言動から
それまでの「反日」とは違う何かを感じ取ったのです。
 前者は
「両国とも領有権は主張するが、現状には手を触れない」との、
いわゆる竹島密約を完全に反故にするものだったからです。
 韓国は金泳三政権時代から竹島での施設を建設するなど
約束を破り始めていました。しかし、大統領の訪問は避けていました。
そこまでやったら日本が本気で怒るとの懸念からでした。
 後者の天皇への謝罪要求も同様で、一線を超えたものでした。
メディアはともかく、韓国政府は
「ちゃんと謝るなら来てもいいぞ」などと
失礼な言い方はそれまではしませんでした。
 日本を貶めて快哉を叫ぶ「卑日」がこの時点から本格化しました。
表「韓国の主な『卑日』」をご覧下さい。
主に韓国政府主導の「卑日」を収録しました。
これ以外に「旭日旗への糾弾運動」など、
表面的には民間有志による卑日行動も始まっています。

心底驚いた告げ口外交
坂巻:李明博政権末期の慰安婦への謝罪要求は唐突で、
「国交回復時の日韓基本条約で解決済みなのに……」
と怪訝に思った人が多かったのではないでしょうか。
鈴置:「慰安婦」は宮沢内閣の時にも
韓国が騒ぎ、もめています。
その時に明らかな決着がついたと日本人は考えていましたしね。
坂巻:それでも「韓国の政権が
末期に国内の支持をつなぎとめるために
いわゆる反日カードを切るのは、これまでもあったこと」と
比較的冷静に捉えていた日本人が多かったと思います。
 しかし、次の朴槿恵大統領は就任するや、
いきなり「千年恨む」――厳密には
「千年たっても加害者と被害者の関係は変わらない」と言い放ち
「慰安婦 で謝らないと日本と首脳会談はしない」と宣言。
そのうえ世界中で「日本は悪いことばかりして謝らない」と
悪口を言って歩き始めた。
鈴置:日本人はこの告げ口外交には心底、驚きました。
おかげで朴槿恵大統領の就任以降、講演の依頼がぐんと増えました。
坂巻:この連載の読者も増えました。
さて、日本人が
「韓国は常識外れのことをするなあ」と
首を傾げていたところに「明治の産業革命遺産」問題。
これが最後のひと押しになりました。
 日本の産業遺産登録に執拗に反対するのを見て、
外交には無関心だった人や
「韓国とは仲良くすべきだ」と言っていた人も
「さすがにおかしい」と感じるようになった。
 「韓国は国を挙げて日本の足を引っ張る国」
との認識がこの時点で定着したと思います。

「産業遺産」が最後の一撃に
鈴置:確かに、あの事件を機に
韓国に見切りを付けた人が私の周辺にもいます。
ことに、直前の日韓外相会談で
「日本の産業遺産登録で手打ち」したのに
登録を決める世界遺産委員会で韓国は合意を破り、
反対したのが効きました。
 泡を食った日本は「第2の河野談話」とも言える不利な文言を
公式記録に残さざるを得ませんでした
(「『世界遺産で勝った』韓国が次に狙うのは……」参照)。
 当然予想される韓国のトリックを考慮し、
合意をきちんと詰めておかなかった日本の外務省の能力はさておき、
韓国という国への不信感が
日本の指導層から普通の人にまで染み渡りました。
 なお、この事件の直後に日本のある外交官が
「産業遺産を巡る韓国との交渉にはアジア専門家は一切関与しなかった。
文化の専門家が担当したから……」と語りました。
 専門家ならともかく、
普通の外交官には韓国という国の不実さは想像もできない、
との言い訳です。
韓国専門家なら騙されなかったかは保証の限りではありませんが。
坂巻:「産業遺産」の前と後、と区分できるほど
日本人の対韓嫌悪感は高まりました。
鈴置:嫌悪感は「卑日」による部分が多いのか、
それとも「離米従中」から来るものが大きいのか、どちらと思いますか。

「対馬で守り切ろう」
坂巻:一般的には、「卑日」によって
韓国に嫌悪感を持った人が多いのではないでしょうか。
あからさまに自分たちに向けられた
「悪意」に反応した結果だと思います。
 他方、「離米従中」は直接的な嫌悪感につながるというより、
日本への切実な影響が懸念される問題と捉えられています。
 後者に関連し、この連載のコメント欄にも「韓国が
中国側に行くとなると対馬が最前線だ。
中国に対してしっかりと備えるべきだ」
などと書き込む読者が増えています。
鈴置:「対馬が最前線」とは。
日本人は元が高麗を道案内に攻めて来た
元寇を思い出しているのですね。
坂巻:コメントを書いてくれる読者は
安全保障などに関心が高い人が多いと思われます。
それに加え、9月3日の北京での抗日式典です。
朴槿恵大統領が米国の反対を押し切って参加したことが
「離米従中」の動きが"ホンモノ"であるとの認識を決定的にしました。
 「韓国は『帰らざる橋』を渡る」でもこの写真を使いましたが、
朴槿恵大統領が天安門の上で習近平主席や
プーチン大統領と並んだ光景を見て
「警戒すべき韓国」を実感した人が多かったでしょう。
天安門の壇上で演説する習近平主席。
向かってその右下にロシアのプーチン大統領、
左下にはカザフスタンのナザルバエフ大統領。
3人に取り囲まれるように座る朴槿恵大統領(写真:ロイター/アフロ)
もう、韓国とは関わらない
鈴置:天安門楼上のスリーショット画像は大きなインパクトがありました。
それまで韓国人は「『中国傾斜』は誤解だ」「『離米従中』は
日本人の作った陰謀史観だ」などと日本人に言ってきました。
 しかし「天安門事件」後、そう言い張らざるを得ない韓国人を、
日本人は冷ややかな目で見るようになりました。
坂巻:コメントを読んでいて興味深いのは、
嫌悪感を表明しながらも韓国に攻撃的になるのではなく
「中国側に行きたいなら行かせよう」
「韓国にはもう関わり合いにならないでおこう」
といった意見が増えていることです。
鈴置:韓国との絶交論ですね。
そうした考え方が主流になっていくのでしょう。
いくら謝っても韓国は「謝罪の仕方が悪かった」と蒸し返してくる。
 ことに最近は新しいネタを探しては世界で「卑日」を繰り広げる。
この連載で繰り返し申し上げたように、
上から目線で日本を貶める「卑日」には
限度というものがありません(「目下の日本からはドルは借りない」参照)。
 そして終わりのない「卑日」の結果、日本人の韓国嫌いは、
流行りの言葉を使えば「ニューノーマル(新常態)」になったのです。
次回に続く

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