慰安婦問題について、いろんな報道: 高橋洋一「ニュースの深層」、TPPをめぐる「3つのデマ」を斬る! ~「アメリカの言いなりになる」論の根拠を徹底検証。 週刊朝日、TPPで一人負けした日本 脅かされる日本の医療、食、健康

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2015年10月19日月曜日

高橋洋一「ニュースの深層」、TPPをめぐる「3つのデマ」を斬る! ~「アメリカの言いなりになる」論の根拠を徹底検証。 週刊朝日、TPPで一人負けした日本 脅かされる日本の医療、食、健康

TPPをめぐる「3つのデマ」を斬る!
~「アメリカの言いなりになる」論の

根拠を徹底検証
2015年10月19日(月) 高橋 洋一
「盲腸の手術に700万円かかるようになる」だって?
やっと環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意になった。

そんな折に、ある人から「日本がTPPに参加すると、
盲腸で700万円掛かるようになる」と聞いて、驚いた。
どうも関西のテレビ番組のなかで、
TPPについてそんなことを解説するジャーナリストがいたそうだ。

そのジャーナリストは、
「東京の番組では、こんなことを話せばNGになる」ということを話したとか。
もし本当なら大変なことだ。
しかし、「盲腸で700万円掛かるようになる」とは、いったいどういうことか。
なぜ、それが東京ではNGになるのか。 
この疑問と真偽については後で答えることにして、
まず、TPPで日本のメリットとデメリットはどうなるのだろう。

現段階で、TPPに関する情報は、

内閣官房のサイト
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/index.html)にしかない。
そのうち、TPP協定の概要
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/10/151005_tpp_gaiyou_koushin.pdf
というものが、基本資料である。

これを見る限り、貿易関税は例外5品目を除き、概ね自由化される。

となると、TPPのメリットは自由貿易の恩恵、ということになる。
自由貿易が恩恵をもたらすというのは、
経済学の歴史200年間でもっとも確実な理論だ。

自由貿易でメリットを受けるのは輸出者、消費者で、

今回の大筋合意に対しても、この両者には賛同意見が多い。
一方で、デメリットになるのが輸入品と競合することになる国内生産者だ。

自由貿易の恩恵とは、メリットがデメリットを上回ることをいう。

このロジックは、2010年11月15日の本コラム
TPPはなぜ日本にメリットがあるのか 誰も損をしない「貿易自由化の経済学」
に書いてある。下図はそのコラムで掲載したものだ。

GDPは6兆円増加する
この種の計算は古くから行われてきており、

先のコラムに書いてあるような経済学の比較静学を使う。
つまりTPP前の状態と、TPPを実施して輸入量が増え、
国内生産者が減少するという
調整を経た後の状態を比較するわけだ。

こうした計算は、国際機関でも行われており、

そこではいろいろな国からの参加者がいるので、
どこの国も極端に有利にならないように、
比較的公正な計算が行われている。
内閣府の試算もそれを参考にしている。

なお、経産省の試算は輸出者と消費者のメリットだけ、

農水省の試算は輸入品と競合する
国内生産者のデメリットだけを意味することが
しばしばであるので、引用には注意したほうがいい。

筆者なりのイメージを含めていえば、

10年くらいの調整期間を経た後と現在とを比べると、
輸出者、消費者のメリットとしてGDPが6兆円増加し、
国内生産者のデメリットとしてGDPが3兆円減少し、それが毎年続く。

政府試算の「概ね10年間で実質GDP3兆円増」とは、

「概ね10年後に今よりGDPが差し引きで3兆円増加し、
それが年々続く」というもので、
「10年間累積で3兆円」ではない
(2013年03月18日付け本コラム
「自由貿易」「安全保障」からもメリット大。
あまりに粗雑で誤解だらけのTPP反対論を論破する』参照)。

このメリットとデメリットも、政府の資料を見る限り、

筆者のこれまでの見立てとあまり変わっていない。

メリットがデメリットを年間3兆円ほど上回るので、

デメ リットを受ける人たちへ補償が行われるのが普通である。
それでも国全体としてTPPは損な取り決めではないのだ。
昨日のNHK討論で、農業関係者が
「兆単位の予算を頼まない」と発言していたが、
これは、デメリットがそれほどでもないことを感じさせる。

その番組内では、デメリットとして

TPP反対派が懸念し ていたものは、
「アメリカの言いなりになってしまう」ということだった。
さすがに自由貿易におけるメリットがデメリットを上回るという
定量的な部分は否定できないので、
貿易ルールがアメリカ有利になって、
日本がデメリットを受けることが強調されていた。

そこで、冒頭に書いた

「日本がTPPに参加すると、
盲腸で700万円掛かるようになる」という話が出てくる。 

日本はそこまで愚かではない
この話の伏線をまず確認しておこう。

医療保険をよくわかっていなかったのでピンとこなかったが、
20歳のアメリカ人が盲腸になり、
病院から受け取った請求書を見て仰天したという
ネット上の話をみて理解した
http://labaq.com/archives/51814438.html)。

この人物は、盲腸手術で5.5万ドル(660万円)請求され、

保険等で4.4万ドル(538万円)まかない、
残りの1.1万ドル(132万円)を支払ったという。

アメリカ生活経験のある人ならわかるが、これはあり得る話だ。

海外に行くときには、保険は必須で、保険会社からも、
盲腸手術入院の都市別総費用例がでている。
そこには、ニューヨークで216万円となっている
http://aienu.jp/relation/expense.html)。
上の人物はちょっとボラれすぎたと思うが、ウソではないだろう。

日本の盲腸総費用の自己負担は、せいぜい20万円である。

日米でこうした差があるのは、公的保険制度の違いである。
日本の公的保険は皆保険制度であり、よくできていると思う。
一方、アメリカの公的保険には不備が多い。

オバマ政権で抜本的な改正(オバマケア)を試みたが、

以前よりマシとはいえ、
日本の皆保険制度にははるかに及ばないものだ。

では、なぜ「日本がTPPに参加すると

盲腸で700万円掛かるようになる」のかというと、
TPPに参加すると、アメリカが自国の保険会社のために
日本に圧力をかけて、
日本の公的保険を根幹から揺るがすというのが、
この話のロジックである。 
しかし、この程度の単純な話は、以前から知られており、
日本政府は、
TPPで日本の皆保険制度に影響がでないように交渉している

実際、政府が以前から用意していたQ&Aには

「TPPで、日本の公的医療保険制度や薬価制度などの
医療の安心が脅かされませんか?」というものがある。
その答で、
「政府が現時点で得ている情報では、TPP交渉においては、
公的医療保険制度のあり方そのものなどは
議論の対象になっていません」と書かれている
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html#7-2)。

実際の交渉でも、内閣官房のサイトになる

「TPP協定の概要」
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/10/151005_tpp_gaiyou_koushin.pdf
では、「金融サービス章の規定は、
公的年金計画又は社会保障に係る法律上の制度の一部を形成する
活動・サービス(公的医療保険を含む)、
締約国の勘定、保証又は財源を利用して行われる
活動・サービスには適用されないこととなっている」と書かれている。

よく考えてみれば、TPPに参加する国は、

それぞれ公的保険があるので、
日本以外の国もアメリカのとおりにするのはもちろん反対である。
だから、それぞれ適用対象外とする見通しを立てるのは簡単だし、
実際の交渉でもそうなっている。

アメリカも、他国の公的保険をアメリカ並みにせよ

なんて馬鹿げたことは決して言わない。
実際、米国担当者の話を調べれば、
対象としないと何度も言っている。 

あのクルーグマンも態度を変えた

なお、薬価制度に関連する医薬品の知的財産権の分野では、

最後の最後までオーストラリアがアメリカと争ったので、
結果として日本は漁夫の利を得ている。
すべてアメリカの言うとおりになるのであれば、
誰もTPPに参加しなくなってしまうだろう。

TPPは多国間交渉であるから、対アメリカという観点では、

二国間交渉より有利だ。
むしろ、アメリカは知的財産権保護などで各国に妥協したので、
アメリカ議会がTPPを認めるかどうかが心配になるくらいだ。

アメリカ議会は、米政府から情報を多く得ているので、

そこで今回の大筋合意について、
アメリカとして譲りすぎという意見が多いのは、日本には朗報であろう。

なお、このアメリカの事情については、

ノーベル賞学者クルーグマンのブログ
http://krugman.blogs.nytimes.com/2015/10/06/tpp-take-two/
に興味深いことが書いてある。

クルーグマンは、知的財産権で

米国企業有利にしようとしている点でTPPに消極的だった。
ところが、米政府(ホワイトハウス)から、
今回の交渉では米政府の態度は
かつてのそれとは変わったと説明されたという。 
米国企業や共和党の怒りを見ると、この点が確認できるとしている。

これで、「日本がTPPに参加すると盲腸で700万円掛かるようになる」

という話がいかにでたらめであるかがわかるだろう。
このようなデタラメ話は、テレビで話すべきではないのだ。
政府が隠すような話ではなく、
もし聞けばデタラメであると即答されるのがオチである。

しかし、これでも引き下がらないTPP反対論者もいる。

彼らが持ち出すのが、
ISD条項(国家対投資家の紛争処理条項)である。
これを使って、
日本に公的保険制度をなくすように仕向けてくるというのだ。

ISD条項でアメリカが好き勝手にできて、

日本で治外法権のようにできるというのが彼らの言い分であるが、
公的保険はそもそもTPPの適用除外なので、
そのようなことはできないのをなぜ理解できないのか。

一般論としても、筆者はISD条項を重大な問題と考えていない。

ISD条項は日本に有利
というのは、ISD条項はTPPで初めて持ち出される概念でない。

これまで日本は25以上の国と投資協定を結んでおり、
その中には既にISD条項が入っているものもあるが、
対日訴訟は一件もない。
アメリカと は、今回のTPPで初めてであるが、
これまでも第三国を使って、日本を訴えてきたことはない。

一方で、世界ではISD条項による訴訟は400くらいある。

だが、訴えられている国は国内法整備が不備の途上国が多い。

ISD条項は投資家や企業が国際投資で相手国に

不平等な扱いを受けないようにするためだから、
日本のような先進国では有利に働くのだ。

ISD条項は何でも訴えられるから危険との意見もあるが、

訴えられても負けなければ問題ない。
安保法の時、某左翼新聞は、法律の明文の規定がないから
自衛隊はアメリカの核兵器を搬送するという
荒唐無稽な意見 をだした。
素人の自衛隊に頼むはずないという「常識」が欠如したのだ。

ISD条項を役人時代に扱った経験がある者にとっては、

ISD条項に関する荒唐無稽ぶりは、
この自衛隊が核兵器を搬送すると同じくらい
バカげた話だということを、申し上げておこう。 

別記:日本郵政株について一言
今週はいろいろなニュースがある。

今日19日、中国の7-9月期GDPがでる。
あの国の統計はあてにならないので、
数字をどうこう言っても意味ないが、
9月7日付け本コラム
G20が認めた「危機の中国経済」 
日本経済を守るためには「消費増税延期」しかない!』
をご一読いただきたい。

それと、今週23日で、日本郵政株の申込み期間が終わる。

先週の週刊現代では、経済評論家など18人に尋ねたところ、
買うと答えたのが5人、
買わないと答えたのが13人という結果が出ていた。
買う5人中3人は上がったら売る、とのことだ。
買うと答えた一人、荻原博子さんは
「上場と同時に高値で売る」という神業をするようだ。
ほぼみんなが買わないか、買ってもすぐ売るという。どうなることやら。
郵政について筆者の意見は、新著

“まやかしの株式上場"で国民を欺く 日本郵政という大罪
をご覧いただきたい。

TPPで一人負けした日本 脅かされる日本の医療、食、健康
週刊朝日 記事  (更新 2015/10/14 07:00)
TPPの大筋合意を受け、大手メディアは歓迎ムードを演出している。
だが、実態は違う。
 TPPは医療分野など国民の健康にも

多大な影響を及ぼすことになりそうだ。
かねて、アメリカの要求で混合診療が解禁され、
国民皆保険が形骸化することが懸念されてきた。
 同時に、農産物の輸入拡大で“食の安全”も脅かされようとしている。
 北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏は、

医師の立場からTPPに強く反対してきた。

「TPP 交渉におけるアメリカの最大の狙いは、

日本の医療と保険業界です。アメリカの製薬会社や
医療業界が政治家などに使ったロビー活動費は、
5300億円に上り ます。
軍需産業の1500億円、
製油・ガス関連業界の100億円と比較しても突出しています。
製薬会社は自分たちの利益増のため
薬価の上限撤廃と日本の医 療分野への参入を求めているのです。
TPPが締結されれば、医療費や薬価が高騰して
国民の自己負担が増大することが予想されますが、
ほとんどがブラック ボックス状態です」

 日本では、薬価は厚労省が決めている公定価格だが、

アメリカでは製薬会社が自由に価格を設定している。

 ところが、TPP締結によって、ISDS条項なるものも導入され、

公定価格が維持できなくなる可能性がある。

 例えばアメリカの企業が投資相手国の規制により損失を被った場合、

世界銀行の傘下機関に提訴して賠償を求めることができる。

  ISDS条項による決定は、相手国の国内法より優先される。

アメリカはこの制度を濫用しており、
訴えられたメキシコなどの国々は、ほぼ負けている。
日本の 国民皆保険や薬価決定のプロセスが、
自由な市場競争を阻害していると提訴されれば、
莫大な賠償金を支払わされるか、
国の制度が覆される危険性がある。
安倍首相はTPP交渉が大筋合意したのを受け、
「世界に誇るべきわが国の国民皆保険制度は
今後も堅持いたします」と嘯(うそぶ)いた。

 だが、TPPは極端な秘密交渉であり、

国民はその内容を知る術を持たない。

「従 来の保険適用の範囲内で行われてきた医療行為は、

そのまま残すでしょう。
私たちが危惧しているのは、
新しい治療法や新薬が開発されても保険適用されないのではないか、
ということです。
新しいがん治療である分子標的治療や抗体医薬などは高額になります。
医療費の抑制が最重要課題の厚労省としても
保険で面倒を見たくない。
アメリカの求めるまま混合診療を解禁し、
患者に自己負担を強いる可能性が高い。
すると、国民は不安になるから、民間の医療保険に加入します。
アフラックなど外資系保険会社が
儲かる仕組みとセットになっているのです」(西尾氏)

 結果、医療格差はますます拡大するという。
 そして食品の安全性では、遺伝子組み換え(GM)作物が

フリーパスになるだろう。
GM作物は除草剤耐性や害虫を殺す毒素を持ち、
摂取すると発がん性など人体への悪影響も指摘される。
現地で交渉を見守っていた山田正彦元農水相が語る。

「GM作物を加工した遺伝子組み換え食品は、

日本の食品衛生法では表示義務があります。
逆に『遺伝子組み換えではない』と表示することも許されています。
アメリ カは、こうした表示がGM作物の輸出を妨げていると異議を唱えている。
ここでも、ISDS条項を盾に表示義務が取り払われることが考えられます。
GM作物 のトップメーカーはアメリカの化学会社モンサントで、
TPPを強力に推進しています」

 モンサントは、ベトナム戦争でまき散らされた

「枯れ葉剤」を製造していたメーカーだ。
現在は、除草剤や殺虫剤など農薬を開発しながら、
それに耐えうるGM作物の種子を販売しているというわけだ。

「GM 作物の多くは大豆とトウモロコシで、

アメリカ人は食べずに家畜のエサにしている。
モンサントの社内食堂では
遺伝子組み換え食品の提供が禁止されているという
笑えない話もあります。
しかし、日本では大豆は納豆にして食べるし、
醤油や味噌の原料です。
トウモロコシもコーンスターチにしてさまざまな食品に使われ ています。
GM作物を最も摂取させられるのは、
日本人かもしれません」(前出の西尾氏)

 さらにモンサントが製造するネオニコチノイド系農薬は、

農作物の内部まで浸透して洗っても落ちないから深刻だ。
近年、世界中で起きているミツバチの大量死の原因とも疑われる。

 EUが規制したのとは逆行して、今年5月、

厚労省は食品残留基準を緩和したが、
アメリカの意向を汲んでいるとしか思えない措置である。

 国民の健康と医療をアメリカに売り渡しながら、

安倍政権の面々はドヤ顔で会見に臨んだ。
他の国々から見れば、滑稽かもしれない。
(本誌・亀井洋志)
週刊朝日 2015年10月23日号より抜粋 


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