慰安婦問題について、いろんな報道: 鈴置高史氏、一歩踏み出した韓国の核武装論 今度は「原子力潜水艦を持とう」。(日米中関係の行方(下)) 米国との同盟、過信は禁物 アーサー・ウォルドロン ペンシルベニア大学教授 2014/3/7付。

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2015年11月26日木曜日

鈴置高史氏、一歩踏み出した韓国の核武装論 今度は「原子力潜水艦を持とう」。(日米中関係の行方(下)) 米国との同盟、過信は禁物 アーサー・ウォルドロン ペンシルベニア大学教授 2014/3/7付。

「早読み 深読み 朝鮮半島」

一歩踏み出した韓国の核武装論
今度は「原子力潜水艦を持とう」
鈴置高史  2015年11月26日(木)3 4 5
韓国の核武装論が現実味を帯びる。
原子力潜水艦を持とうとの声が上がり始めたのだ。
その原潜は核ミサイル搭載用であろう。

2年で核を持てる
 
鈴置韓国の核武装論がだんだん具体化してきました。
朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹が書いた
釜山沖で考えた生存の一撃(11月5日、韓国語版)がそれです。

[珍コラ] 通常戦力を増強する日本を「野蛮」罵り、
原潜建造を目論む韓国は「生存の一撃」と肯定 by 韓国の反応
2015/11/08 12:00  ホル韓ニュース速報「改」
日本語版:中・日と対峙する韓国、
生存懸けて原潜建造計画を推進せよ
韓国語版:釜山沖で考えた場合の生存の一撃
引用:朝鮮日報 http://goo.gl/3A1AYU

 楊相勲主幹の主張は原子力潜水艦の保有
――つまり、
核ミサイルを発射するためのプラットホームを持とう、です。
最大手紙の論説主幹が
署名入りで書いた記事だけに見逃せません。
 楊相勲主幹は5月にも
「北朝鮮が核兵器を実戦配備したら
『韓国も核武装をする』と宣言しよう」と論陣を張っています
(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。
 この時は「韓国の技術を持ってすれば
核武装には2年もかからない」と書きました。
ただ、核弾頭を持つだけでは本当の核武装国にはなれません。
 敵の核攻撃から逃れ、
核ミサイルを発射できる原子力潜水艦が不可欠です。
今回はその原潜を持とうと国民に呼び掛けたのです。

「安倍」以前に戻らぬ日本
 記事は10月23日に釜山沖で開かれた

観艦式を参観したエピソードから始まります。
韓国海軍の威容を誇らしげに紹介した後、20年前の決断が
「今」を生んだと強調します。以下です。 

海軍の姿は1990年代中頃に

政府が設定した目標にほぼ到達したようだ。
当時、韓国政府が独島(竹島)に接岸施設を建設しようとした。
すると日本が激しく反発し、東海(日本海)に緊張が走った。
政府は日本に比べて海軍力が劣っていることに危機感を持ち、

12兆ウォン以上の予算を投じて整備を決めた。
その結実が今の海軍だ。
政治のリーダーシップのなさにあきれ返ることもある。

が、本当にやるべき時に、
賢明な判断を下してきたことも事実なのだ。

 そして楊相勲主幹は今後、

日中の脅威が急速に高まると指摘しました。
以下です。
日本がその顔、

日本人本来のものかもしれない顔を少しずつ見せ始めた。
我々の命綱である南シナ海でも、
尋常でない雰囲気が漂い始めている。
30年後にも米国が今のままの米国であり、

中国がわれわれの希望する中国となり、
日本が今の安倍政権以前の日本に戻るか考えたときに
「そうなる」と誰が自信を持って言えるだろうか。

潜水艦で日本にも一撃
中国だけでなく、日本も危険な国になるとの
認識が高まっているのですね

(「『北朝鮮並み』の日本、『ロシア並み』の韓国」参照)。
でもなぜ「原潜」なのでしょうか。 
鈴置いい質問です。
楊相勲主幹は以下のように議論を進めます。
 

韓国のある外交官によると、
個人的に親しい米国海軍幹部が
「韓国は潜水艦に投資すべきだ」と語った。
韓国は世界の4大強国に囲まれている。
北朝鮮は核兵器による危険な火遊びに没頭している。
それらの国に挟まれた韓国は、必要な時に相手に

「一撃」を加えることができなければ、
ある日突然何をされるか分からない。
しかし、中国のGDPは韓国の10倍近くに膨れ上がり、
日本もほぼ4倍だ。軍拡競争などできない差である。
米海軍関係者のアドバイスは、

どうすれば韓国が一撃の手段を持ち、
最低限の抑止力を維持できるかに対する答えだ。
韓国は潜水艦に投資しなければならない。
敵国の心臓部に一撃を加え、

海上ルートを遮断できる潜水艦が
海底のどこに待機しているか分からないとなれば、
それ以外の武器とは次元の違う抑止力を発揮することになる。
核兵器を保有できない韓国としては、

これ以上の非対称戦力はない。
潜水艦戦力全体の規模で見れば
中国や日本に対抗できないとしても、
潜水艦保有による抑止力が失われるわけではない。
比較的小さい国として持ち得る最善の策だ。

通常弾頭の威力は小さい
 楊相勲主幹の主張は、この辺りから怪しく
――衣の下から鎧が見え始めます。
「抑止力」を得るために
「敵の心臓部に一撃」する能力を持とうと言いますが、
それには核兵器が不可欠なのです。
 潜水艦から発射するミサイルに
通常弾頭を積んでも意味が薄い。
核兵器ではないので1発当たりの威力は小さいからです。
 「海上ルートを遮断できる」とも楊相勲主幹は主張しますが、
それにはかなりの数の潜水艦を配備する必要があります。
日本など対潜能力の高い国からすれば、
数が少々増えても韓国の潜水艦部隊は
「非対称戦力」とは言えないのです。

「核兵器を保有できない韓国としては、
これ以上の非対称戦力はない」
と書いていますが……。
鈴置:
「核武装論」と見られないためのカモフラージュでしょう。

それに続く文章が、本音を語ってしまっています。

原潜を持ってこそ核武装国

問題は相手に一撃を加えるには、ただの潜水艦ではなく
原子力潜水艦を持たねばならないとの事実だ。
我々が保有するディーゼル潜水艦と、
原子力潜水艦の力の差は比較にならないほど大きい。
米国と英国が保有する潜水艦は全て原子力だ。

 米英が原潜を運用するのは、
核ミサイルを発射するためのプラットホームにするためです。
敵国が自国を攻撃したら、どこからとも分からぬ海の底から
核ミサイルで報復する――と見せつけるのが「核抑止力」です。
 そのためには長期間潜航し続ける必要があり、
浮上して大気を取り込む必要のない
原子力駆動型が決定的に有利なのです。
 対水上艦艇用に運用するのなら
通常動力型の潜水艦で十分であり、
それには騒音が低く発見されにくいという有利な点もあります。
 米英は、敵の核ミサイル原潜を攻撃するための潜水艦も
原子力駆動としていますが、潜水艦隊として
動力を一本化した方が運用しやすいなどの理由からです。

要は「原潜を持とう」との主張とは
ほぼ、核武装の主張なのですね。


「南シナ海」を隠れ蓑

鈴置その通りです。
そしてこの記事の掲載直後にもう1本、
原潜とは露骨に言ってはいませんが、
大型潜水艦を造ろうと呼び掛ける記事が載りました。
 安全保障に詳しいキム・ギョンミン漢陽大学教授が
中央日報に寄せた「米中の南沙諸島緊張への韓国の対処法
(11月9日、日本語版)です。
同じ日に同じ見出しで韓国語版にも載っています。
 米中対立が深まる中で韓国はどうすべきかを訴えた記事です。
キム・ギョンミン教授は航行の自由を確保するための外交努力と、
米中の間でのバランス外交を説いた後で、

以下のように主張しました。
3つ目は海上輸送路を自主的に守ることができる

海軍力を備えることだ。
軍事力が優秀な周辺国に効果的に対処するには、
非対称戦力の潜水艦を集中的に増強する必要がある。
何よりも3000トン級以上の潜水艦に注力し、

東シナ海を越えて南シナ海にいたる海上輸送路の水路を
自分の手相のように把握していかなければならない。

 潜水艦は攻撃兵器であって
「海上輸送路を守る力」の要素にはなりにくい。
敵がシーレーン攻撃に使うのは主に潜水艦ですから、
駆逐艦や哨戒機による対潜能力を引き上げるのが普通です。
 こうした意見を語れば、
韓国は南シナ海での緊張激化を隠れ蓑に
核ミサイル搭載用の潜水艦を造るつもりかと疑われても仕方ありません。
ことに「3000トン級以上の潜水艦」にこだわるところが怪しいのです。
 韓国の軍人や安保専門家は垂直発射管を備えることのできる
3000トン級の大型潜水艦を前から欲しがっていました。
悲願と言ってもいいでしょう。
核ミサイルを持っても、それを打ち上げる
垂直発射管を持つ潜水艦がなければ意味がないからです。

原潜を念頭に大型化
 ちなみに文化日報は
3000トン級の張保皐(チャンボゴ)Ⅲ、3500トン以上に変更へ
(6月29日、韓国語)という記事で、
以下のように報じています。
2020―2029年に計9隻の建造を目標とする張保皐Ⅲ事業は、

基本設計段階では水中排水トン数を
3000―3300トン程度に見積もってきたが、
詳細設計段階で3500―3700トン程度となった。
安保専門家らは排水トンの上方修正に関連、

原子力推進型潜水艦の建造を念頭に
設計変更した可能性が高いと見ている。
大宇造船海洋が2020年初めの建造を目標に

詳細設計を推進している張保皐Ⅲは、
中央に垂直発射管6門、
艦首に水平発射管8門が装着される予定だ。
垂直発射管には射程距離1300キロの
海星(ヘソン)3潜対地巡航ミサイルを搭載、
水平発射管には魚雷と誘導弾、機雷などを装備する。

 この記事がどこまで正しいのかは分かりません。
 
しかし、核ミサイルを搭載できる原潜の建造を
心から願っている人々が韓国にいて、
彼らがついに表に出てきて声を上げ始めたのは事実なのです。

核武装を勧める米国
米国は韓国の核保有を認めるのでしょうか。
鈴置:
楊相勲主幹の記事中にある

 「潜水艦に投資しろとアドバイスする米海軍軍人」も、
実は韓国に核武装を勧めている可能性が大です。

核武装を勧めるのですか?!
鈴置:
日本に対しても2014年以降、

 核武装を勧める米国の安全保障関係者が出てきました。
ある関係者は「日本は原子力潜水艦を保有すべきだ。
米国から買えばいい」と語ったそうです
(「米国も今度は許す? 韓国の核武装」参照)。
 日経の経済教室欄に
「核武装の勧め」を書いた米国の専門家もいます。
産経ではなく日経です
2014年3月7日に
米国との同盟、過信は禁物」を寄稿した
アーサー・ウォルドロン 
(Arthur Waldorn)ペンシルバニア大学教授です。
 日本に対しては「核武装を認めるような発言は慎む」のが
米国の関係者の暗黙の了解だったのが、
一気に変わった、と矢野義昭・拓殖大学客員教授は分析しています。
 

米韓同盟を打ち切れ
なぜ、米国は変わったのですか?
鈴置:
同盟国を守る余力を失ったからです。

下手すると「頼りにならない米国」を見限る同盟国が出かねない。
 それなら核不拡散はあきらめ、核武装を認めることで
同盟国を引き留めよう、との発想が生まれたのです
(「10年後には『北朝鮮』がもう1つ?」参照)。
 最近も韓国の核に関する論文が発表されました。
ジャパンタイムズ(Japan Times)にも載ったので、
日本でも話題になりました。
 米ケイトー研究所(Cato Institute)のドーグ・バンドウ
Doug Bandou)シニア・フェローが書いた
U.S. should retire outdated alliance with S. Korea」(10月21日)です。

「時代遅れの米韓同盟はやめろ」との見出し、過激ですね。
 この研究所は小さな政府や非介入主義を主張する、
自由至上主義の立場を採っています。
米国の平均的な意見とはとても言えません。
でも、この見出しを見た韓国人はぎょっとしたでしょう。

「韓国、おまえ、自分でやれ」
(リアリストのバンドウさん定期ポストw)
|奥山真司の「アメ通LIVE」(20150922)


なぜ「米韓同盟を打ち切るべき」なのですか?
鈴置「米国は同盟のコストを一方的に負担しており、
何の利もない」とバンドウ・シニア・フェローは主張しています。
要は「韓国ただ乗り論」です。

悪漢だけが核を持つ
韓国の「離米従中」に怒って同盟をやめろ、
と言っているわけではないのですね。
鈴置:
この論文は「韓国の裏切り」に明示的には触れていません。

そもそも米韓同盟は米国にとって不要との主張です。
もちろん「裏切り」が激しくなるほどに、
こうした主張が増えるでしょうけれど。

共和党の大統領候補、トランプ(Donald Trump)氏も
「韓国の同盟ただ乗り」を強く批判していますね。
 
鈴置ええ。メディアが大きく取り上げるなど、
韓国人は米国で広がる
「ただ乗り論」を非常に気にしています。
 ただ、韓国の核武装論者にとって幸いなのは、
米国内に「ただ乗り論」と同時に
「核武装許容論」も高まっていることです。
 バンドウ論文
「今のままの同盟ならやめるべきだ。
韓国には自分で身を守らせろ」と主張した後
「核を持たせればそれは可能だ」
との論理を展開します。
核に関するくだりを以下に翻訳します。


「大人の国」として韓国は、半世紀前に取り組んだ

核兵器開発を再開するかもしれない。
核不拡散は重要な目標だが、常に守らねばならぬ価値ではない。
現在、北東アジアでは中国、ロシア、北朝鮮という

悪漢だけが最終兵器を持っていて、
米国の同盟国である民主国家はいずれも持っていない。
その結果、米国はソウル、東京、台北を守る代わりに、
ロサンゼルスを危険にさらす羽目に陥っている。
韓国を米国の傘の下に置くよりも、

韓国の核保有の方が
まだましな選択かもしれないことを米政府は考慮すべきである。
 

父親も核開発に邁進
「半世紀前に韓国が取り組んだ核兵器開発」とは?

鈴置1970年代に韓国は核兵器と、
その運搬手段であるミサイルの開発に密かに取り組みました。
米国から軍事的な支援を打ち切られても
自力で国を守れる
「自主国防体制」をうち建てたいとの願いからです。
 しかし、核兵器が世界に広がることを恐れた米国は
、韓国に圧力をかけて核開発計画をつぶしました。
朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の父親、
朴正煕(パク・チョンヒ)大統領時代のことです。
 でも今回は米国の側からも
「核を持たせよう」との声が上がっているのです。
韓国人にとっては大いに勇気づけられる話です。
(次回に続く)

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2015年11月13日金曜日
鈴置高史、「ねずみ男」にドルは貸さない 
木村幹教授と韓国の「右往左往」を読む(5)

(日米中関係の行方(下))
米国との同盟、過信は禁物 
アーサー・ウォルドロン ペンシルベニア大学教授
2014/3/7付日本経済新聞 朝刊
<ポイント>
○中国は太平洋への確かな出口を求めている
○日本は自衛隊の能力増強と日米同盟で対応
○現在の日本の備えが有効性保てるのは10年


中国が紛れもなく軍事大国化しつつあり、

その力を領土拡張のために行使する意欲を示していることから、
日本は国家安全保障上の二つの問題に直面する。
もはや過去数十年のように
これらの問題を無視することはできない。
 最初の問題は短期的なもので、

尖閣諸島(中国は釣魚島と呼ぶ)の領有権を
積極的に主張する中国の新しい政策によって引き起こされた。
その動機は尖閣諸島周辺の
エネルギー資源だとみる向きもあるが、
私は中国が長期的戦略を優先していると考えている。
拡張を続ける中国海軍は現在、

日本の領海または近海を通してしか太平洋にうまく出られない。
尖閣諸島を奪取し、軍隊を駐留させることができれば、
中国は周辺海域を軍事的に支配し、
中国海軍の艦隊が沖縄と宮古島の間の
広い海域を容易に航行できるようになる。
 中国軍がこうした能力を持てば、

台湾から約110キロの位置にある与那国島までの
列島の日本による支配を無効にはできなくても、
脅かすことができ、また沖縄本島にも脅威となる。
  中国軍の活動が

宮古島の北方の海域に焦点を合わせているのは、
中国が太平洋への確かな出口を必要としているためだ。
米太平洋艦隊の情報部門を統括する
ジェームズ・ファネル大佐が、中国軍の演習は、
尖閣諸島またはそれ以上を奪取するための
「短期集中作戦」に備えていると警告したのもこれが理由だ。
  そんなことはあり得ないように思われるかもしれないが、

ファネル大佐は正しい。
現在の中国は、電撃作戦によって
ベトナムやフィリピンなどから
小規模な領土を奪取することを想定している。
こうした作戦は大規模な戦争にエスカレートする
可能性があるため危険で無責任だが、
それでも中国が想定していることは事実だ
 日本はこうした脅威に対応するために二つのことをしている。

まず中国による日本領土奪取を阻止するのに
十分な程度まで 自衛隊の能力を緩やかに増強している。
中国と全面戦争をするのではなく、
局地的な「アクセスを拒否する」戦術だ。
第二に、日本は同盟国である米国が
日本に不足している軍事力を提供することを期待している。
 私は米国人として、

日本の自衛隊の対応が
知性的に計画されていることに敬意を払う。
限定的で、どこにも挑発的な要素はみられず、
少なくとも短期的には成功する確率が高い。
  ただ私は、

日本と米国との同盟関係をそれほど信頼していない
私はニクソン元大統領による対中関係改善以降について、
機密指定が解除された公文書を詳しく 研究してきた。
少なくとも当時の米政権は、米国のアジアにおける
将来の主要な対話相手は中国と考えており、
日本の立場は明確に定義されていなかった。
  米国は日本との間に安全保障条約を締結しており、

これまでは同条約を完全に順守してきた。
それにもかかわらず、ワシントンでは
日本より中国の方が重要だと考える勢力が影響力を増している。
日中間の武力衝突が起こった場合、
米政府が中立的な立場をとるのではなく、
日本を本気で支援するより、中国との妥協を迫って、
尖閣諸島の領有権を放棄するよう
日本に促すのではないかと懸念される。
 評論家のパトリック・ブキャナン氏は

すでにそうした立場をとっている。
米国が安倍晋三首相の靖国神社参拝を一方的に非難し、
中国の扇動的なレトリックや国家が後押しする反日デモなどには
言及しなかったことも、
米国の立場が揺れていることを示すもう一つの兆候かもしれない。
 そこからどのような結論が導かれるのだろうか。

それは明白だ。
日本は米国の行動にかかわらず、
全領土を自らの手で守れるような
軍事力を今すぐに持つ必要がある。
 とはいえ、先述のような限定的な戦術によって、

中国に脅かされている日本の領土や
その他のアジア諸国の領土が当面は確保できると仮定しよう。
それが第二の質問につながる。
そうしたアプローチはどのくらい有効性を保てるのだろうか。
 その答えはおそらく10年だ。

中国はその間に軍備増強を続け、
いずれこうした防衛を圧倒する力を持つようになる。
同じ10年間に米国の軍事力は着実に弱くなっていくだろう。
  今でさえ、米国は

一度にせいぜい一つの戦争をする能力しか持たない。
これは、例えばワシントンが中東に巻き込まれている時に、
中国が日本やその他の近隣諸国に軍事侵攻したとしたら、
米国の軍事力の大半が他の地域に投入されているため、
米国の支援はほとんど期待できないことを意味する。
 理想を言えば、

中国が軍事的優位性を得るまでの10年は
紛争回避のために使われるべきだ。
これは譲歩によって実現できるものではない。
譲歩すれば中国の野心を勢いづけるだけだ。
交渉や、信頼に値する条約の締結によって
それが可能かもしれないが、私は懐疑的だ。
  中国は10年後、大量の通常兵器と

核兵器を保有するようになるだろう。
第2次世界大戦以降、米国の同盟国である日本や
その他のアジア諸国は、最終的な安全保障を
米国の軍事力と抑止力に頼ってきた。
これは、米国が核の報復を受ける可能性があるときに、
核兵器を他国のために使うという
米国の約束を当てにするこ とを意味する。
私自身は、こうした約束は守られないとみている。
米本土に対する核攻撃への報復以外の理由で
核兵器を使用する米国の大統領はいないだろう。
 米国の最も古い同盟国であり、

米国を最もよく知る英国と
フランスもこうした考え方を共有している。
いずれも核攻撃を受けた際に
米国が守ってくれるとは考えていない。
  英国はバンガード級原子力潜水艦3隻を保有しており、

それぞれが核弾頭を搭載したミサイルを艦載している。
これらの潜水艦のうち1隻は常に海中を航行し、 
英国を攻撃する者に壊滅的な打撃を加える態勢を整えている。
フランスもそれに匹敵する軍事力を保有している。
こうした抑止力によって、
他国から攻撃を受けないことを保証しているのだ。
 日本のミサイル迎撃システムは、

おそらく世界の最先端だが、英国やフランスに匹敵するような
安全保障を提供できないことは明確に理解する必要がある。
迎撃システムは核攻撃の阻止には不十分だ。
システムが「飽和状態」になってしまう、
つまり対処できる以上の攻撃 にさらされる可能性があるからだ。
また、ミサイルを改造して迎撃システムを突破する方が、
新たな脅威に防衛力を適応させるよりもはるかに容易だ。
 大規模な通常兵器と核兵器を開発している

敵対的な中国を背景に、これらの事実は、
日本がこれまで考慮してこなかった、
政治的に微妙だが
現実的で避けることのできない問題を突きつける。
  その問題に対する答えは困難だが、極めて明確だ。

中国は脅威であり、米国が抑止力を提供するというのは神話で、
ミサイル防衛システムだけでは十分でない。 
日本が安全を守りたいのであれば、英国やフランス、
その他の国が保有するような最小限の核抑止力を含む
包括的かつ独立した軍事力を開発すべきだ。
 対抗する軍事力がなく、信頼できる同盟国もない日本が、

将来のいつかの時点で、日本より大きく、核兵器を保有する
侵略国との紛争に直面する可能性がある。
日本にとってそれは悪夢以外の何物でもない。
 Arthur Waldron 48年生まれ。ハーバード大博士。
専門はアジア・中国史、国際関係

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