慰安婦問題について、いろんな報道: シリアに軍事介入 ロシアはなぜアサド政権を守ろうとするのか?。

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2015年11月8日日曜日

シリアに軍事介入 ロシアはなぜアサド政権を守ろうとするのか?。

 意見をつなぐ、日本が変わる。BLOGOS
THE PAGE 2015年11月08日 17:00
シリアに軍事介入 
ロシアはなぜアサド政権を守ろうとするのか?
内戦が続くシリアにロシアが空爆を開始して1か月以上が経ちました。
ロシアの軍事介入は、
中東情勢をより複雑化・泥沼化させるとの懸念が出ていま す。
ロシアはもっぱらアサド政権打倒を目指す反政府軍に対して
空爆を行っていると報じられますが、
ロシアはなぜアサド政権の肩を持とうとするのでしょう か。
ロシアとシリアの関係をめぐる
歴史的経緯やプーチン大統領の思惑について、
放送大学教授の高橋和夫氏が解説します。
【図】激動の中東情勢 複雑に絡み合う対立の構図を整理する
●ロシアの花嫁  ロシアとシリアの関係は外見よりも深い。

それは1950年代のソ連時代にさかのぼる。

 ソ連は1950年代中盤に兵器の供給を通じて

エジプトやシリアなどのアラブ諸国に接近した。
兵器の供給は、兵器を操作する要員の訓練を必要とする。
多くのシリア人の青年が訓練のためにソ連に送られた。
例えば、その一人に
ハーフェズ・アサドというミグ戦闘機のパイロットがいた。
後にシリアの大統領 となった人物である。
現在のバシャール・アサド大統領の父親である。
ソ連に送られたのは、軍人ばかりではなかった。
医学などを修めるために留学した青年も 多かった。
ちょうどソ連と対立していた超大国アメリカが
フルブライト奨学金などで
多くの若者を世界から呼び寄せていたようにである。

 シリアを含むアラブ世界からの留学生の大半は男性であった。

そして留学中にロシア女性と恋に落ち、多くのアラブ人が
ロシアの花嫁を伴って帰国し た。
シリアの場合、その数は2~3万と推定されている
その結果、子供まで含めると数万のロシア系の人々が
アサド政権の支配地域に生活している。
ロシアと シリアを結ぶ人間的な絆である。
ロシアのプーチン大統領にとっては、
シリア問題の重要なポイントは同胞の安全確保である。

 こうした強い交流にもかかわらず、

1985年のゴルバチョフのペレストロイカ以降、
ソ連は中東でのアメリカとの覇権争いから手を引いた。
それは、経済停滞により、そうした外交ゲームを戦う
経済的余力を失ったからでもあった。
さらに1991年にはソ連自体が崩壊した。
 

●リビアの「二の舞い」
 2000年、ロシアの指導者にプーチンが就任すると、

エネルギー価格が上昇し始めた。
石油と天然ガスの両方の世界有数の生産国であるロシアは、
この価格上昇の恩恵を受けた。
プーチンは、急増したエネルギー収入で解体状態にあった軍を再建し、
再び中東を含む国際政治で大きな役割を担おうとしてきた。 
2008年から2012年にかけて、
首相に「退いて」大統領のポストをメドヴェージェフに譲った。

 この期間の中東地域における重要な展開は

2010年末に始まった「アラブの春」であった。
これはアラブ諸国における一連の民主化要求運動であった。
まず2011年1月にチュニジアで独裁政権が倒れた。
そして2月にエジプトで同じことが起こった。
さらに秋には、リビアで大規模な反政府運動が起こっ た。
その拠点は東部の都市ベンガジであった。
しかし独裁者カダフィの部隊がベンガジに向かって進撃し、
反政府勢力は虐殺の危機に瀕した。

 この時に国連安保理で決議が成立した。

この決議は、ベンガジの市民を守るための
人道的な軍事介入を容認していた。
ロシアは拒否権を行使せず、実質的に決議の成立を認めた。
NATO(北大西洋条約機構)諸国の空軍が、
この決議に基づいて空爆を開始した。
そしてリビア軍のベンガジへの進撃を止め市民を 守った。

 ところがである。

NATO軍は、軍事介入を継続して拡大し、リビア軍を解体した。
そして、最後にはカダフィが殺害され独裁が終わった。
安保理決議 の人道的介入の範疇を超えた軍事行動であった。
ロシアは、こうした内容の決議を容認したのではない。
ロシアのメドヴェージェフ大統領は、明らかに欧米諸国に騙された。
これがプーチンの認識である。

 2012年にプーチンが大統領に復帰してからの政策は

「リビアの二の舞」は繰り返さないという言葉に集約される
ロシアは、拒否権の行使の意志を明確にして
シリアのアサド政権に対する非難や
軍事介入を容認する決議の成立を安保理で阻止し続けている。

 プーチン大統領は、ロシアが影響力を有する政権の

欧米の軍事介入による打倒を認めないという姿勢である。
仲間は守るのである。そして9月末に始まったロシアの軍事介入により、
アサド政権の崩壊のシナリオは短期的には可能性がなくなった。
 

●チェチェンへの飛び火
 これ程までのプーチン大統領のシリアのアサド政権支持の背景に

何があるのだろうか。
その大きな理由の一つは冒頭で既に述べた。
シリアのロシア系市 民の存在である。
人間という面から見れば、第二にイスラム急進派で戦う
チェチェン人などのロシア出身者の存在がある。
その数は3000人とも報道されている。
しかも比較的戦場での経験が豊富で戦闘員として
手ごわいというのが、一般的な評価である。
もしアサド政権に対してイスラム急進派が勝利を収めれば、
チェチェン人は、その余勢を駆って帰国し
ロシアでの闘争を激化させるだろう。
プーチンにしてみれば、この面からも急進派の勝利は阻止したい。

 加えてシリアには、ロシアが中東で使用できる

唯一の海軍基地タルトゥースがある。
アサド政権の崩壊は、その喪失を意味しかねない。
このように、モ スクワのアサド政権支援には様々な要因が絡み合っている。
そしてプーチン大統領のシリアへの介入が意味するのは、
ロシアが大国として中東の政治に復帰したという事実である。

■高橋和夫(たかはし かずお) 

評論家/国際政治学者/放送大学教授(中東研究、国際政治)。
大阪外国語大学ペルシャ語科卒。
米コロンビア大学大 学院国際関係論修士課程修了。
クウェート大学客員研究員などを経て現職。
著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、
『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、
『イスラム国の野望』(幻冬舎)など多数

シリアに介入するロシア その複雑な背景と思惑
2015年10月16日(Fri)2 3 4 5 6
廣瀬陽子 (慶應義塾大学総合政策学部准教授)
1972年東京生まれ。
専門は国際政治、コーカサスを中心とした
旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。
主な著作に
『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』
(慶應義塾大学出版会)、
『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』
(光文社新書)、
『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)
【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

9月末以降、
ロシアのシリアへの介入はそのレベルを増幅しつつあり、
米国などの反発が高まっている。
 ロシアがシリアに軍を展開し始めたのは、

8月半ばからであると言われている。
ロシアサイドは、最初は、「シリアのアサド政府に対する
補給、人員育成、国民向け人道支援」がその目的だと主張していたが、
9月上旬にはロシア軍がアサド政権軍を支援するために
戦闘に参加しはじめたという報道が出て、
また 9月半ばにはロシアがシリア国内の空軍基地に
砲兵部隊とT90戦車7台を派遣したこと、
またロシアが約1500人収容可能な
プレハブの建築物を設置したと も報じられた。
加えて、ラタキア近くに新規の航空基地も建設し、
多くの戦闘機やヘリコプターも導入された。
 そして、9月30日からロシアはシリア領内での空爆を開始し、

日増しに攻撃のレベルは高まり、巡航ミサイルによる
カスピ海からの攻撃や
クラスター爆弾の使用までが報じられるようになった。
ロシアは、ISIS(イスラム国)に対する攻撃であると主張しているが、
欧米諸国などはロシアの攻撃はほとんどが穏健な反体制派であり、
民間人にも死傷者が出ているとして激しく反発している。
また、トルコも領空侵犯されたと抗議するなど、
諸外国からの批判も増えているが、
ロシアはアサド大統領の要請およびロシア連邦議会の
委任に基づくものであり、攻撃しているのはあくまでもISISないし
ダーイシュであるとして、 その正当性を強調し続けている。
 ロシアの介入に絡む要素はかなり複雑で、

その理由は簡単には説明出来そうもないが、
本稿では、筆者が9月後半にロシアの専門家に
インタビューした内容なども踏まえ、
より多面的にロシアの介入の背景と思惑を考えていきたい。
 
画像:iStock
ロシアがシリアに介入する理由
 ロシアがシリアに介入し、
アサド政権を支援する背景はかなり複雑である。
 第一に、従来的な目的がある。
盟友アサドを守り、ロシアが旧ソ連圏外で唯一保持している
シリアのタルトス港の軍事基地を保持し続けたいということだ。
同基地は、ロシア海軍が地中海における
プレゼンスを維持するために極めて重要だ。
この点については、2012年の拙稿
「ロシアがシリアを擁護する3つ の理由」
(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2027)を参照されたい。
第二に、シリアでの攻撃は、ウクライナ問題から世界の目をそらし、
国際的なロシアの立場を
有利にするためにモスクワが仕掛けたというものだ。
本説 は、あまり報道などでは言われていないが、
上述のロシアでのインタビューの際に複数の筋から聞いた。
特に説得力を持って語っていたのが、
ロシアの著名な軍事専門家である
パーベル・フェルゲンガウエル氏である。
氏の見解を紹介しよう。

ロシアにとって
ウクライナはシリアより何十倍も重要な存在
 氏は、この動きは6月くらいから始まったという。
6月のG7サミットで、G7がロシア石油の輸入禁止や
SWIFT制度からのロシアの銀行の締め出 しなどを含む、
今後のロシアに対する制裁強化策について合意をしていた。
それについては、複数のG7外交官から氏に情報がきたことから、
当然ロシアの中枢部にも伝わっているだろうという。
それらの制裁はロシアにとっては致命的であるため、
欧米との緊張を和らげる必要に迫られた。
そこでシリアで新たなアク ションをとる決断をしたのだろうという。
 ロシアにとって、ウクライナはシリアより
何十倍も重要な存在で、今でもウクライナの重要性は変わらないが、
戦略的な目的を達成するために、シリア を利用し、
将来的にロシアにより
都合の良いウクライナの解決策を引き出そうとしているという。
しかも、ウクライナ東部への派兵は明らかであるにもかかわらず
(ウクライナ領であったクリミアへの派兵は当初否定していたが、
後に認めた)、シリアについては堂々とロシアの関与を認めていることは、
世界にロシア軍 が実際よりも多く展開しているイメージを持たせ、
より大きな注意を引く効果も持つと氏は言う。

 氏の説は、広く共有されているものではないが、
この説を用いれば、確かに色々な動きを説明できる。
プーチンは、6月には中東問題解決のためのプー チン・プランを構想し、
過激主義、テロ、ISISとの戦いのために、
国際的な拡大連合を構築することを目指し始めた。
そして、6月29日にシリアのヴァリ ド・ムアレム外相は訪露し、
ロシアのラブロフ外相と会談し、
ロシアはシリアの諸問題を政治的に解決し、
テロを排除することで協力していくことを約束し、
そのあたりから実際の準備を進めていったと考えられる。

イラン最高指導者ハメネイ氏の直属特殊部隊
との入念なすり合わせ
 
 他方、7月にはやはりロシアと良好な関係を維持してきた
イランのカセム・ソレイマニ少将がロシアを訪問し、
相次いで敗北しているアサド政府軍もロシア軍の支援があれば
形勢逆転できるとした上で、シリアへの介入を呼びかけ、
これを機に介入計画を入念に立て始めたことも明らかとなっている。
ソレイマニ少将はイランの革命防衛隊のエリートである
海外特殊部隊「エルサレム部隊」の司令官で、
最高指導者のアリ・ハメネイ氏に直属しており、
隣国イラクでイランが支援するシーア派民兵組織の
反政府戦闘の指揮も担当している
軍の高官であることから、イランの本気度も伝わってくる。

 また、ソレイマニ少将の訪露の前には
ロシアとイランのハイレベルな接触があり、
アサド政権に対する支援を強化する必要が議論されていたことや、
ハメネイ氏がロシアに特使を派遣し、
その上でプーチンはシリア介入を前提としてソレイマニ少将の派遣を要請し、
ソレイマニ氏が戦域の詳細を説明したという報道もある。
また、7月にはアサド自身も支援を要請していた。
いずれにせよ、アサド政権を支援するロシアとイランが、
アサドの依頼もあって入念に計画を策定 し、
介入に踏み切ったことは明らかである。

 加えて、8月頃からウクライナ東部(ドンバス)での戦闘が縮小され、
武装解除が進み始めたというのも事実だ。
ウクライナからシリアに戦線が動いたといっても
間違いではない現実があったのである。
 第三に、シリアからの難民問題が深刻になる中、
とにかくシリアが安定することが最優先だという空気が
特に欧州諸国の間で広まっていることから、
ロシアが武力によってシリアを安定化させれば、
欧州からロシアの外交力が評価される可能性が高いこともあるだろう。
特に難民問題が極めて深刻な脅威となって いるギリシャや東欧諸国では、
ロシアの対シリア攻撃を評価する声も実際に大きいという。
加えて、とりあえずの安定のためには、
アサド政権の継続も黙認される可能性が高く、
そうなれば、ロシアの中東戦略の重要な要素が
諸外国(主に欧州諸国)から担保されることにもなるのである。
最後に、シリアからロシアや近隣の中央アジアへの
テロの波が及んでくることに対する警戒心もある。
そもそもロシアのチェチェン人やチェルケス人などは、
ロシア帝国の圧政やソ連の政策により、
歴史的に多くが強制的に移住を強いられた過去もあり、
かなりの人数がアラブ地域に居住してきた。
そのため、シリ アからのチェルケス難民を
ロシアが受け入れるべきだという要請が、
ロシア在住チェルケス人から出されているが、
黙殺されている状況がある。

 加えて、最近のロシアのルーブル暴落により
(拙稿「効果に乏しい欧米の対露制裁 拍車をかける中国」
ロシアへの出稼ぎ労働者の収入が以前より
半減してしまったことから(ルーブルで支払われる額は変わらなくとも、
出稼ぎ労働者は外貨に両替して自国の家族に送金するため)、
多くの出稼ぎ労働者がロシアを去り、自国に帰国する傾向が強まっている。
 そして、そのような失業して帰国した
出稼ぎ労働者にISISのリクルーターが接触し、
賃金目当てで少なくない人々がISISに向かっているという 報道もある。
それらの人々がロシアや中央アジアに帰還した際に、
ロシアや近隣諸国が不安定化する可能性があるため、
ロシアとしてはISISを早期に潰したいという希望も強く持っているのである。
 これらの要素はすべて除外できない、
つまり複合的な要因によって
ロシアはシリアに介入したと考えられるのである。 

実際の戦闘は?
 ロシアのシリア介入に先立ち、
プーチンは国際社会にISISとの戦いのために、
国際的な拡大連合を結成することを呼びかけていた。
最初の呼びかけ は、

9月15日にタジキスタンの首都ドゥシャンベで開かれた
集団安全保障条約機構(CSTO)サミットでのプーチンの演説で行われ、
テロとの戦いでの連携 を強く求めたのだった。
これが前哨戦で、その本番は、9月28日に米国ニューヨークで
開催されていた国連総会におけるプーチンの演説であった。
 ISISとの戦いのために、イラン・イラクも加えた
「大連合」を結成する構想を提案したが、プーチンが描くシナリオが、
ISISを掃討し、アサド 政権を強化して
シリアの安定を導くというものであったため、
アサドなきシリアを目指してきた欧米諸国が受け入れるはずもなく、
特に米オバマ大統領は激しく 反発した。
 そして、この直後、9月30日にロシアがシリアで空爆を始めたのである。
前述の通り、この空爆の前にはアサド大統領の要請があり、
加えて、9月 30日にロシア上院は、プーチン大統領の要請に基づいて
ロシア軍海外派遣を承認するか否かを審議し、

全会一致で承認していた。
プーチンが自身の構想を拒絶されたために、
空爆に踏み切ったのではないかという報道もあったが、
上述のように、空爆はそれとは無関係に
かなり綿密に計画させていたと考えられる。
ロシアは当初、ISISに対する空爆しか行わないと主張していたが、

諸外国はISISに対する攻撃はほんのわずかで、
ほとんどの空爆は欧米が支援してきた反アサド勢力に向けられており、
多くの一般市民が死傷しているとロシアを激しく批判している。
ロシアないしロシアの支援を受けたアサド政権軍の攻撃では、
国際条約で使用が禁じられているクラスター爆弾も用いられており、
ロシアに対する批判の声は日に日に強まっている。 

カスピ海からシリアに空爆
 なお、ロシアの世論調査機関であるレヴァダセンターによれば、

ロシア国民の70%は空爆に賛成し、政府の方針を支持している。
しかし、地上戦には反発する意見が多いという。 
 だが、10月7日には、ロシアの対シリア政策は空爆を超えて、

新たな段階に入った。ロシア海軍がカスピ海に展開している
フリゲート艦からシリアに 26発の巡航ミサイル攻撃を行ったのである。
数発は上空を通過するはずのイラン、イラクに落ちたという報道もあるが、
ほとんどは約1500キロ離れたシリアに着弾したという。
ロシア側はアレッポやラッカのISIS拠点を爆破したと戦果を喧伝するものの、
欧米側はやはり反政府勢力が攻撃されたと主張している。
ともあれ、ロシアの対シリア政策は、空軍、海軍を含むものとなった。
カスピ海は湖であり、黒海と違って、
米国などNATOの艦隊が入ってくる可能性が皆無であることから、
カスピ海からの攻撃によってロシアの海軍力を誇示した可能性も高そうだ。
 ともあれ、現状では陸軍の展開はまだ報じられていない。
上述のように、ロシア国民も陸軍の展開は望んでいないが、
ロシアの上層部の一部には、陸軍の展開をも主張する者がいるという。
そして、一部報道では、ウクライナで展開されていた
ロシアの精鋭部隊がすでにシリアに送られたという情報もある。
加え て、シリアへの派兵を想定して、
北コーカサス出身者の軍事訓練が9月上旬くらいから
本格的に行われているという報道もある。
 仮に、北コーカサス出身者をシリアの戦闘に送り込んだ場合は
ロシアにとってもメリットが大きい。
まず、前述のようにコーカサスの民族は、アラブ地 域に多くの同胞がおり、
政権が「同胞の救済」をちらつかせれば、
積極的に戦闘に参加する者も少なくないだろう。
また、ロシア人にとって北コーカサス民族は、

歴史的な差別感にくわえ、
チェチェン紛争やテロのトラウマもあり、嫌悪の対象である。
そのため、シリアでの戦闘でロシア人の青年が死亡すれば
国民の反発も大きいが、北コーカサス出身者が死亡しても
ロシア人が反発するとは思えないということもあるからだ。
 以上のことから、
今後、そのような限定的な

陸上での軍事行動が起こる可能性は否定できない。

ロシアの配慮と懸念
 このようにロシアのシリアへの介入は、

国民に支持されているが、問題が生じ始めているのも事実だ。
アサド勢力は、シリアでも少数派のアラウィ派だが、
それはイスラーム教シーア派系であり、大きく見ると、
ロシアが当地のシーア派を支持しているように見える。
そのため、ロシア国内のスンニ派から
政府に対する怒りが高まっているという。
そこで、政権側は、諜報機関などを用いて、国内のシーア派と
スンニ派の間の対立を煽り、
怒りの矛先が政府に向かないよう に対策を取り始めたという。

 また、領空侵犯や後述のようにイスラエルとの接近などで

トルコやパレスチナ始め、
幾つかのイスラーム系諸国からの反発も当然ある。
だが、トルコは 領空侵犯には厳重注意をするものの、
ロシアとは友好的な姿勢を保っている。
これは、ロシアのこれまでの配慮が実を結んだといっても良いだろう。
たとえば、 9月23日には、モスクワに欧州最大規模の
モスクワ・カテドラル・モスク」がオープンした。

 このモスクは、もともと「モスクワ・モスク」として

1904年に建立されていたが、
2005年から改修・拡大工事が進められていた。
そして、1万 人を収容できる大モスクに生まれ変わったのである。
同モスクには、建設にあたり、プーチンの尽力があったことが
高らかと記載されているが、実際のところは、個人やカザフスタン、
トルコからもかなりの資金援助があったという。
そして、開所式典には、プーチン大統領のほか、
トルコのエルドアン大統領や
パレスチナ自治政府のアッバス議長も参加し、
ロシアがイスラームを重視する姿勢を内外にアピールした形だ。

 そこからも、プーチンはイスラームの友達であるが、

イスラームでも
テロリストは許さないという立場を明確にしたと言えるだろう。 

シリアは捨て駒?

 ロシアのウクライナにおける「計画」  
最後に、もう一度、
前述のフェルゲンガウエル氏が主張する議論に戻ろう。
氏は、シリアへの介入は
ウクライナにおける目的達成のためだと主張する。
それではロシアは
ウクライナの今後の展望をどのように考えているのだろうか。

 氏は、ロシアはプランA・Bの二つの計画を想定しているという。

プランAを氏は、「ヤルタ2」と称する。
つまり、第二次世界大戦後の世界の分割に ついて
米英ソの首脳がクリミアのヤルタに集って行った
「ヤルタ会談」の新バージョンであり、関係国が集まって、
ウクライナ問題を含めた全てを話し合い、
世界を新たに分割するという構想である。
それは、プーチンが9月来主張している、
ISISに対する「大連合」とも調和する議論である。

ロシアにとってはプランAが理想的だが、

それがうまくいかなかった場合に想定されているのが第二の計画、
プランBだと氏はいう。
全地球的に、米露が勢力圏を分割できなければ、
ロシアは米国とその同盟国との切り離し進め、反露連合に楔を打ち込み、
米国を弱体化させるというのである。
特に、それにより、 EUや中東の中での対立を促進し、
米国とアラブの同盟諸国や日本との関係を分断するのだという。

 また、同時に、ウクライナの現政権が自滅することも待つのだという。

シリアの基地は大事であり、シリアに対する支援は継続するが、
仮にアサド政権 の保護に失敗したとしても、
その時はリビアやバルカンのように、全てはアメリカのせいだと
責任を転嫁すれば、ロシアの国際的な地位に影響はないというのである。
そして、このプランBは実は着々と進んでいるという。
その最も顕著な例が、イスラエルだという。
イスラエルは近年、ロシアと良好な関係を維持しており、
ロシアに兵器も売却しているし、ロシアのウクライナでの行為を
一切批判しておらず、制裁にも参加していない一方、
ウクライナに軍事支援や武器売却も行っていない。

 そのようなイスラエルのネタニヤフ首相が

9月21日に軍トップのエイセンコット参謀議長やハレビ軍情報部長、
コーエン国家安全保障顧問という軍の重鎮による
異例のチームを引き連れてロシアを訪問し、
プーチン大統領とシリア情勢を中心とした
今後の中東における協力体制について議論をした。
氏は、この 事実はとても重いと協調した。

 実際、イスラエルはシリアには不介入の立場をとっているものの、

アサド政権がヒズボラに武器を供給していると批判し、
それを理由にシリア上空の制 空権の確保を重視してきた。
となれば、今後、ロシア、イスラエル、米国の空軍が
シリア上空で偶発的に衝突する危険性もあったわけだが、
ロシアとイスラエルの間では協調路線が保たれる可能性が高くなる。
このことの意味は大きいだろう。 

今後の展望
 以上述べてきたように、

ロシアのシリア攻撃は決して場当たり的なものではなく、
長期的な展望に立ち、ロシアの国際的なポジションを高めつつ、
かつ内政も安定させ続けるための
様々な思惑を反映した上での動きであると言える。

 今後の展望は、シリアとウクライナ双方の趨勢にも大きく影響されるし、

またロシアがどこまでやれるのかという持久力次第という面も大きい。
特に、 ロシアが経済難である今、ロシアがやりたいようにできる可能性は
それほど高くないかもしれない。
他方、シリアもウクライナも持久戦の様相も呈してきている ことから、
今後の展望を予測することは現状では極めて難しい。
 とはいえ、本稿で提示した要素は
今後のロシアの外交を巡る動きを考える上で大きな鍵となるはずである。
今後の状況の展開を注意深く分析していく必要があるだろう。

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