慰安婦問題について、いろんな報道: 朝日新聞、韓国の核武装「認められない」米議会、韓国政党幹部に。鈴置高史氏「核武装中立」を覚悟する韓国 それは、中国にとっても悪くない。核武装して“奴隷根性”を捨てよう 親米派も「今度こそ、米国の脅しは聞かない」。日本を「一撃」できる国になりたい「日韓併合」をバネに核武装

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2016年9月19日月曜日

朝日新聞、韓国の核武装「認められない」米議会、韓国政党幹部に。鈴置高史氏「核武装中立」を覚悟する韓国 それは、中国にとっても悪くない。核武装して“奴隷根性”を捨てよう 親米派も「今度こそ、米国の脅しは聞かない」。日本を「一撃」できる国になりたい「日韓併合」をバネに核武装

【韓国の軍事力】国会でセヌリ党の鄭鎮碩(チョンジンソク)院内代表が
原子力潜水艦の導入を促す
米議会は先週、訪米した韓国与野党幹部らに対し、
韓国の核武装や
米戦術核の朝鮮半島再配備は認められないとの立場を伝えた。
韓国の与党セヌリ党などが19日、明らかにした。
米側は「核の傘」の提供を再確認し、
高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の
韓国配備を急ぐ考えも示したという。
 同党の鄭鎮碩(チョンジンソク)院内代表らが訪米し、
米国のライアン下院議長ロイス下院外交委員長らと会談した。
鄭氏は19日の幹部会議で訪米結果について
「米側は戦術核の半島再配備について
否定的な反応を示した」と報告。
「米国は、核の傘を含む拡大抑止力の韓国への
提供を繰り返し確認した」と説明した。
 米側は、共和党大統領候補のトランプ氏が主張した
在韓米軍の撤退問題について、議会の議決が必要で、
誰が次期大統領になっても究極的には変化はないと説明。
双方は「北朝鮮核問題の唯一の解決方法は、
米韓同盟の強化しかない」という点で一致したという。
(ソウル=牧野愛博)

2016年9月16日金曜日
【中央日報】米国は韓国に確かな核の傘を保障すべき時だ。

「核武装中立」を覚悟する韓国それは、中国にとっても悪くない
2015年12月24日(木)2 3 4 5
前回から読む)
 韓国の核武装論者は米国をどう説得するつもりだろうか。
党大会前後に核実験?
韓国で声高に語られる核武装論。次の展開は?
鈴置:核武装論者はまず
「核選択権」を宣言すべきだと主張しています。
具体的には北朝鮮が核兵器を実戦配備した瞬間に、
韓国も「我が国も核武装する権利を持つ」と
世界に向け宣言する手法です。
 4回目――次の核実験で北朝鮮は核兵器を完成し、
実戦配備するだろうと見る専門家が多い。
そして過去の実験の間隔から考え、
次の実験がいつ行われても不思議はない状況です
(「北朝鮮の核実験」参照)。

●北朝鮮の核実験
1回目 2006年10月9日 M4.2
2回目 2009年5月25日 M4.7
3回目 2013年2月12日 M5.1
注)数字は実験によって起きた地震の規模。
米地質研究所の発表による

北朝鮮は2016年5月に
36年ぶりとなる朝鮮労働党の党大会を開きます。
金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の権力確立を誇示するために、
党大会の前後に次の核実験を実施するとの観測もあります。
もし核武装論者の主張が受け入れられるなら、
韓国は近く「核選択権」を宣言する可能性が大きいのです。
 「核選択権」は在野の保守運動指導者、
趙甲濟氏
趙甲済(チョ・カプチェ)氏と
朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹が
2015年5月に相次ぎ記事化しました。

 2人の主張が極めて似ていることと、
掲載がほぼ同時だったことから韓国の保守派の中の
「核武装サークル」の存在をうかがわせます
(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。
米国向けに宣言

「核選択権」が宣言されたとして、
いつ発動されるのですか?
鈴置:核武装論者は
「米国の核の傘が信頼できなくなった時」と規定しています。
例えば「北朝鮮が韓国に侵攻・挑発したにも関わらず、
北が核兵器を使うのではないかと恐れて
米国が必要な反撃をしない場合」です。

 2010年の延坪島砲撃など、
北朝鮮はしばしば軍事力を使って韓国を挑発してきました。
在韓米軍の存在が挑発のエスカレートを抑えていましたが、
北が核兵器を持つと
その抑えが消滅すると韓国は恐れているのです。

「核選択権」は
米国に向けて宣言する側面もあるのですね。
鈴置:その通りです。一義的には北朝鮮に対し
「お前が持つなら俺だって持つぞ」と言うことで、
北の挑発や南進を防ぐ狙いです。
 しかし同時に「私に核を持たせたくないなら、
同盟の義務を完全に果たしてね」と、
米国に念を押す目的もあります。

国民を団結させる「選択権」
「核選択権」を宣言すれば、
米国は同盟の義務を果たしてくれるものでしょうか?
鈴置:韓国の核武装論者もそこは不安に思っているようです。
仮に、米国が北の挑発にきちんと対応してくれない時は、
自前で核兵器を開発する覚悟かと思います。
 その時こそ「核選択権」宣言が効いてくるのです。
「義務を果たしてくれないと核武装する」と予め警告してあるとして、
米国に文句は言わせないつもりでしょう。
 「核選択権」は国民への説得効果も持ちます。
朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代、韓国は米国によって
核開発を阻止されました。
韓国人の間には
「核を持とうとしても、また米国から取り上げられるだけだ」
といった、日本とは異なる核コンプレックスがあります。
 「核選択権」宣言は
「大丈夫だ。今度はきちんと道筋を踏んでいる。
もう、米国に邪魔されない」と国民を勇気づけ、
核武装に向け団結を図る目的も大いにあるのです。

米韓同盟を打ち切られても
果たして「中国の急浮上を、

核武装した韓国が止めることができる」のでしょうか?
鈴置:
その部分はかなり我田引水の議論と思います。
ただ、韓国の有力な核武装論者が
「核を持ってしまえば米国も認める」と信じ、
保守派にそう呼び掛けていることは厳然たる事実なのです。

要は「韓国が核武装しても米韓同盟は続く」
と信じているのですね。
鈴置:その通りです。ただ、注目すべき動きがあります。
それと並行して「仮に米韓同盟がなくなっても、
核武装さえしておけば何とかなる」
との考え方も韓国で生まれていることです。
 韓国の核武装とは関係なしに、
米韓同盟が揺らぎ始めています。
その中で、北が核を持つから核を持つのではなく、
一本立ちした国なるために核を持つ、
との発想が韓国で強まっていることを
見落としてはいけないのです。

4つの選択肢
 「『ヴォーゲル声明』に逆襲託す韓国」でも指摘しましたが、
韓国人は外交的な孤立を感じた時、
4種類の反応を示すようになりました。
ここで取り上げたのは韓国の執拗な反対にも関わらず、
米国の政府と議会が安倍晋三首相を温かく迎えたケースです。
 韓国人は「日本をひいきする米国」に逆上しました。
新聞のネット版への書き込みやSNS(交流サイト)では

米国側に戻って日本以上に大事にされるようにする
中国側に行って米国を見返す
北朝鮮との統一を急いで米国頼みを脱する
核武装して米中いずれにも頼らない国を作る
――の4つの意見が、
いずれも同じような割合で主張されたのです。

 「蟻地獄の中でもがく韓国」で述べましたが、
南シナ海での中国の軍事基地化を念頭にオバマ
(Barack Obama)大統領が朴槿恵大統領に
「どちらの味方か」と迫った時も、似た反応が起きました。
 東亜日報は社説で米国側に戻ろうと主張しました。
一方、中央日報の社説は中国には逆らえない、と主張しました。
ハンギョレなど左派系紙は北朝鮮との関係改善を訴えました。

核武装して中立
最大手紙の朝鮮日報は
どっち付かずの社説を載せたのでしたね。
鈴置:
その通りです。
白黒をはっきりさせるのが好きな韓国紙としては異常でした。
でも、よく読むと核武装を念頭に置いているように思えます。
結論部分は以下です。
米中対立が現実のものとなった場合、
韓国がいかなる論理をもってどう行動すべきかを
あらためて根本から検討し、国家としての戦略を
明確にする必要があるという事実が、
今回の朴大統領の米国訪問で突き付けられたのだ。
韓国は核問題と統一問題のいずれにおいても
米国、中国双方と協力していかねばならない。
北朝鮮と中国に不信の目を向ける米国、
そして北朝鮮を擁護する中国との間で
どのような立場を取るべきか。韓国が抱える大きな宿題だ。

 米中が対立を深める中で双方と協力する
――ためには「中立」しかありません。
しかし、周辺国と比べ明らかに軍事力が劣るままなら、
北朝鮮の核も統一問題の解決も難しい。

 朝鮮日報の社説はここで筆を止めていますが、
解決策として「核武装中立」を思い浮かべた読者もいたことでしょう。
社説では書かないにしろ朝鮮日報は
時々、シニア記者のコラムで「核武装の勧め」を書きます。
 そして先ほど見たように韓国の国民も「核武装」を、
外交的な苦境を打開する
4つのうちの1つの選択肢と認識しているのですから。

長持ちしない米韓同盟
 米中の対立が深まる中、

米韓同盟は本質的な矛盾に直面しています。
米国の主敵は中国であって北朝鮮ではない。
韓国の主敵は北朝鮮であって絶対に中国ではない。
それどころか中韓は協商
――準同盟と言ってもよい関係になりつつあります。
共通の主敵を失った同盟はいずれ解消される可能性が高い。
その時に備え、核武装する必要があると
韓国人が考えるのは、ごく自然なのです。

 『韓国の自衛的核武装論』のベースとなった
韓国語版の『我々はなぜ核爆弾を持たねばならないのか』。
裏表紙には次のようなキャッチフレーズが書かれています。
大人になるのか、奴隷として生きるかの分かれ道だ
 もし、北朝鮮の核に対抗するために核を持つのなら、
後半の部分だけでいいはずです。
前半部分には
「大国に国の運命を託さなくていい大人の国になるために」
核武装すべきだ、との含意が込められていると思います。

核なしで独立できない
 趙甲済氏は12月17日にも
との見出しの記事を書いています。
 見出しの言葉は1961年6月、フランスのドゴール
(Charles André Joseph Pierre-Marie de Gaulle)大統領が
ケネディ(John F. Kennedy)大統領に語ったものです。
 フランスはその前年に核実験に成功し、
米国の核頼りからの「独立」に動いていました。
なぜ、自前の核が必要かをドゴール大統領は説明したのです。

 この記事は韓国人に
核武装の必要性を改めて説いたものですが、
趙甲済氏はドゴールの
「核を持たない国は本当に独立した国とは言えない」
との言葉も紹介しています。

感情で動く朴槿恵の韓国
朴槿恵政権はどう動くと思いますか?
鈴置:
この政権には確たる方針というものが見当たりません。
その時その時で対症療法的に、あるいは感情的に動きます。
 12月17日に無罪判決の出た
産経新聞の前ソウル支局長の名誉棄損裁判を思い出して下さい。
こんな裁判を起こせば、言論の自由を侵すと
世界から見なされ、韓国の威信を損ねるのは自明でした。
 それでも大統領の顔色を見て韓国の検察は起訴してしまいました。
起訴当時から、政権の不用意さに
呆れる韓国の識者が多かったのです。
 外交政策もそうです。米中とは等距離を置くことで双方を操る。
米中との良好な関係を武器に日本と北朝鮮を叩く
――という朴槿恵外交は、またたく間に破綻しました。
 米中が、力のない韓国に操られるわけもない。
当然、米国は「どちらの味方だ」と韓国の不誠実さに怒り出す。
米韓関係の悪化を見透かした中国は、
相当に無理な要求も韓国に押しつけるようになった。
 日本も米中のトラの威を借りる韓国は無視し、
米国とは同盟を強化する一方、中国とは関係改善に動きました。
韓国は「妄想外交」を展開したあげく、動きが取れなくなったのです。

核を求めて国民運動
確かに、韓国は思い付きで動いていますね。
鈴置:
朴槿恵政権の「行動パターン」を以下のように解いてみせる
韓国の識者が多いのです。
側近は大統領の気分を良くする政策を上げることだけに努める。
大統領は国民から受けそうな政策だけを採用する――です。
 そして大統領の任期が残り半分を切りました。
レームダック現象が始まる中、
政権はこれまで以上に
国民の喝采を浴びることを重視するようになるでしょう。
 核武装も世論次第と思います。
もし、北が4回目の核実験に成功し、
核武装論者が核武装を求める国民運動を起こしたら、
この政権がそちらに動く可能性が大いにあります
 それが分かっているから、趙甲済氏は
「ソウル市の中心部で数十万人が集まる
『核武装要求国民大会』を持続的に開くべきだ」
と主張するのでしょう(「核武装して“奴隷根性”を捨てよう」参照)。

米国もちゃんと知っている
韓国の決意を米国は知っているのでしょうか?
鈴置:
もちろん知っています。
朴槿恵大統領の初の訪米を控えた2013年4月26日に、
米議会調査局が「U.S.-South Korea Relations」を発表しました。
 この報告書は「2013年の北の核実験は
韓国の自前の核抑止力保持への希求を呼んだ」
(3ページ)と指摘するなど、
韓国に核武装論が存在することを明確に指摘しています。

米国はともかく、
中国は韓国の核武装に反対するのではありませんか?
鈴置:
確かにそう見る人が多い。
韓国の核武装が引き金となって日本もそれに動く可能性がある。
中国はそれを防ぐべく韓国の核武装は
全力で食い止めるだろう――との推測からです。
 もちろん中国は「日本へのドミノ」を食い止めたいでしょう。
しかし「韓国の核武装」を利用する手もあるのです。
中国はそれと引き換えに米韓同盟を破棄させるかもしれません。
 「南北の核武装によって双方の軍事力が均衡した以上、
米国が韓国に軍を置き続けるのは不均衡をもたらす」などと、
理屈をこねればいいのです。
 何なら「米韓同盟の破棄と引き換えに、
中朝同盟を打ち切る」と中国は保証してもいい
朝鮮半島全体の中立化は、遠く離れた米国の勢力を
アジア大陸の一角から完全に駆逐することでもあります。
中国にとって、願ってもない話なのです。

韓国には認めても日本には……
でも、日本が核武装に動いたら
中国はどうするのでしょう?
鈴置:
韓国の核武装は米韓同盟の破棄と引き換えに認めるが、
日本の核武装は絶対に阻止する――手があります。
 最近、唐突に中国が
日本の保有するプルトニウムを問題化し始めました。
10月20日、国連で中国の傅聡軍縮大使は
「日本の保有するプルトニウムで1000発以上の核弾頭を製造可能だ。
日本の一部政治勢力は、国際政治で影響力を持ちたいなら
核兵器を持つべきだと主張、
核開発を絶えず求めてきた」と対日批判を繰り広げました。
 「核武装を求める日本の政治家」がいるとは初耳ですが、
とにもかくにも中国が日本の核武装に
歯止めをかけようとするのは間違いありません。
 中国は韓国を使い走りにして
「軍国主義が復活する日本」を世界で訴えています。
それも「日本の核武装阻止戦略」の一環と思われます。
 中国のこうした唐突な「日本の核武装への批判」の背景には、
北朝鮮と韓国の核武装の動きがあると見るべきでしょう。
 「韓国の核武装」を語ると「そんなバカな」と一笑に付す人が多い。
でも、核にまつわる厳しい現実を
直視しないのは日本人ぐらいなのです。

核武装して“奴隷根性”を捨てよう
 奴隷根性を捨てるためにも核兵器を持とう――。
韓国の核武装派は主張する。
北東アジアに恐怖の均衡

前回前々回は、朝鮮日報という
韓国の最大手紙が核武装を呼び掛けているとの話でした。
鈴置:
この新聞の核武装論には年季が入っています。
2013年2月12日に北朝鮮が3回目の核実験をしました。
 その直前に、保守論壇の大御所である金大中
(キム・デジュン)朝鮮日報顧問が
(2013年2月5日、韓国語版)を書いています。
ポイントは以下です。
北朝鮮が核兵器を放棄することはあり得なくなった。
世界も北の核を既成事実として認める方向に向かっている。
可能な対応策は3つしかない。
まず、米国など西側が北朝鮮との関係を正常化して
国際社会に引き出すことだ。
ただ、これは不確かな方法だ。
それが難しい場合、一定の国際ルールの下で
韓国が核保有することにより、北朝鮮の核の効果と
意味を相殺する方法がある。
北東アジアを「核の恐怖の均衡地帯」にするということだ。
最終的には「北の核」ではなく
「北の体制」を変える発想に立って
根源的に解決する道がある。
金氏体制の崩壊と統一がそれである。

米日中ロに通告
北の核武装に対抗するための案は3つあるけれど、
1番目と3番目は実現が難しい、ということですね。
鈴置:
ええ。従って、直ちにとり得る道は
2番目の「韓国も核武装すること」だと
金大中顧問は主張しているのです。
 その20日後になりますが、
朝鮮日報は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が就任した
2013年2月25日の社説
(韓国語版)でも、以下のように主張したのです。
北朝鮮から「最終的な破壊」と
核兵器で脅迫されている韓国としては、
国際協力とは別次元の軍事的・政治的な
対処方法を独自に模索するしかない。
国家と国民の保護という厳粛な課題を
大統領が実践しようとするなら米日中ロに対し、
我々の切迫した必要を満たしてくれない場合には
我々自らが解決策をとるしかないということを
はっきりと伝えなければならない。

核武装に向け国民大会
「核武装しよう」と露骨に書いてはいませんね。
鈴置:
社説ではっきりと核武装を主張すれば、

世界から韓国も北朝鮮と同じ存在と見られ、
北に対する核放棄圧力が弱まりかねない。
そこで「核武装」との単語は使わなかったのでしょう。
 でも、韓国人が読めば
「核武装の勧め」であることはすぐに分かります
社説はともかく、
少し前に大物記者が署名記事でそう書いているのですし。
 在野の保守運動指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏も
同じ時期に――北朝鮮の3回目の核実験の日に
「韓国も核を持とう」と
自分のサイトを通じ国民に呼びかけています。
 その記事は日本語にも訳されました。
統一日報のサイトで読むことができます。
(2013年2月12日)です。
 趙甲済氏は国民の強い意思を世界に見せつければ、
核は持てると強調しています。
その部分を要約します。
核武装すれば国際社会から
経済制裁をされると憂慮する人もいる。だが、
安保のためには経済的損害を甘受する必要がある。
ただ、合理的な論理と法理で世界を説得すれば、
制裁は受けない。
北が核を廃棄すれば我々も廃棄することを明確にしたうえ、
米国と中国の圧迫に対応できる外交力を
強化していくことが奴隷根性や事大主義を克服する道だ。
自衛のための核武装運動は韓国人の奴隷根性と
事大主義を克服する絶好の機会だ。
我々の生存は我々が決定するとの姿勢で固く団結すれば、
韓国社会の弊害のかなりの部分を解決できる。
ソウル市の中心部で数十万人が集まる
「核武装要求国民大会」を持続的に開くべきだ。

韓国の核コンプレックス
核武装と奴隷根性や事大主義が関係するのですか?
鈴置
:1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)政権が
秘密裏に核開発に動きました。
しかし、米国の圧力に屈し計画を放棄させられました。
 今度こそは、大国の命じたままに動く
「奴隷根性や事大主義」から脱し、
核武装を実現しようということでしょう。
 逆に、核武装さえすれば大国の言いなりになる
「奴隷根性や事大主義」を捨て去ることができる、
との主張でもあります。
 韓国には日本のような「核アレルギー」は存在しません。
被爆国ではないからです。
しかし、核を持とうとしても
どうせ大国に脅されるから持てるはずはない、
という別の意味の「核コンプレックス」があります。
 約40年前に脅された実体験があるからです。
「朴正煕大統領が暗殺されたのは
核開発に動いたからだ」との俗説さえ韓国にはあるのです。

もう、米国の言いなりにはならない
 朝鮮日報の金大中顧問も先に引用した
以下のように「大国の横暴」を批判しています。
強大国の優越意識丸出しの思考に異議を唱えたい。
弱小国や途上国が核を持とうとすると、
強大国は「危険性」とともに
「核の効率的管理の不在」を指摘した。
自分たちは管理できるが私たちには難しいとの理屈だ。
 金大中顧問も趙甲済氏も韓国では
親米保守の代表的人物とみなされてきました。
金大中顧問は2013年に「二股外交」というコラムを書くなど、
一時は米中等距離論を打ち出しました
が、今では再び、米国との関係が最も大事だと説いています。
 趙甲済氏は「自由と民主主義の理念を共有する
米国と手を組むほかない」との主張で一貫しています。
 しかし2人とも、北朝鮮が核武装するというのに
韓国には許さないというのなら
「今度こそは米国の言いなりにはならないぞ」
と宣言したのです。

中国への過剰な期待
では、2013年の北の3回目の核実験の後に、
韓国で核武装要求運動は起きたのですか?
鈴置:
いいえ、そんな運動は起きませんでした。
韓国では常に大事件が起きていまして、
北の核実験もすぐに忘れ去られてしまった感があります。
 趙甲済氏は別の説明――中国説を唱えています。
これも当たっていると思います。
日本語に翻訳された彼の著書『韓国の自衛的核武装論』の
19ページを要約しつつ引用します。
2013年初めから韓国で本格化した自衛的核武装論を
米国と中国は真剣に受け止め、韓国政府もこれをカードとした。
ところが中国の北韓(北朝鮮)への態度が変わりつつあるとの
希望的観測が韓国メディアを通じて広まると、
同年夏からは(韓国内の)核武装論への関心が弱まった。

中国が助けてくれると
韓国人は本当に思ったのですか?
鈴置:
韓国人は中国に過剰な期待感を抱きます。
米国と同盟関係にある韓国の苦境を、
中国がタダで救ってくれるわけもないのに。
 中国とすれば、核を失った北朝鮮を
米韓が圧迫し崩壊させるリスクも考えねばなりません。
下手すれば米軍が軍事境界線を越えて北上し、
中国との国境まで来かねないのです。

またしても事大主義
なぜ韓国人は、そんな過剰な期待を中国に抱くのでしょうか。
鈴置:
それに関し、趙甲済氏は続けて以下のように記しています。
長年の事大主義の影響が残って
親中的な韓国のメディアと政界は、
北の核問題の解決を中国に頼んで解決しようとした。

またしても事大主義ですか。
鈴置:
今度は中国への「事大」ですけれどね。
韓国、ことにその外交を分析する時にはこの「事大主義」や、
その背景にある
冊封体制の歴史を考慮に入れないと、大きく読み違えます。
 例えば、韓国がなぜこれほどまでに中国にすり寄るのか、
理解できない米国の外交関係者が多い。
彼らは国際政治や外交史を学んではいますが
西洋中心で、東洋の国際政治
――冊封体制に関する知識は乏しいのです。
 話を戻すと、もちろん中国は「事大主義」に裏
打ちされた韓国の過剰な期待に応えてくれませんでした。
 2013年の、朴槿恵政権にとって
初の中韓首脳会談でもそうでしたが、
中国はことあるごとに「朝鮮半島の非核化」を唱えます。
文言が「北朝鮮の非核化」ではないことに注目下さい。
 中国は「北朝鮮の核はなくすべきだ」と言いつつ
「北が核を放棄した時には南も核の傘から出るべきだ」
つまり、米韓同盟の破棄を暗に要求し続けているのです。
 逆に言えば、韓国が
米韓同盟を打ち切る姿勢を見せない限り、
本気で北朝鮮の核問題の解決には
乗り出さないぞ、ということなのです。

核開発に向け着々
朝鮮日報が核武装の旗を振っているのはよく分かりました。
肝心の韓国軍はどう考えているのでしょうか。
鈴置:
軍はこれに関し一切、発言していません。
しかし、世界の軍人や安保専門家の間では
「韓国の国軍が核武装を検討しない方がおかしい」
と言う人が多い。
敵国である北朝鮮が
露骨に核武装に乗り出しているのですから
(「米国も今度は許す?韓国の核武装」参照)。
 ある日本の専門家も「歴代の政権の意思とは関係なく、
韓国軍は核武装の夢を捨てていないだろう」と言います。
 1980年代に韓国の国立研究所が
国際原子力機関(IAEA)の規約に違反し、
申告せずにウラン濃縮の前工程である「ウラン転換」と、
核燃料からのプルトニウム精製・抽出をしたことが判明しています。
 2000年にはこれまた未申告で、
ウラン濃縮も実施しました。
量は微量だったとされていますが、
核兵器に使えるほどの濃度だったと報じられました。
 いずれも2004年に明らかになり、
日本でも大騒ぎになりました。
しかし、IAEAの
規約違反に関する国連安保理での論議は避けられ、
韓国に対する処分は見送られました。
 当時の国際社会は北朝鮮の核開発阻止に
全力を挙げており、
それへの悪影響が懸念されたためと見られます。
 一方、核ミサイルを発射できる
垂直発射管を備えた大型潜水艦の建造計画が、
2013年ごろから韓国で報じられるようになりました。
 例えば、聯合ニュースの
(2013年8月4日、日本語版)です。
なお、韓国の安保専門家の間では
少なくとも2000年代から、
この計画が語られていたそうです。

歴史への罪
本当に、核開発に向け着々、という感じですね。
鈴置:
米韓原子力協定の改定交渉に関連、
やはり韓国は核武装するつもりだな、
と専門家から見なされました。
ウラン濃縮と使用済み核燃料の再処理の権利獲得に
異様にこだわったからです。
いずれも核兵器の製造に必須の工程です。
 この協定は1974年に結ばれ、2014年に期限が切れました。
2013年になっても韓国の執拗な要求により、
改定交渉が進みませんでした。
 そこで2年間、協定の期間を延長して交渉を続け、
2015年4月22日に新しい協定の
仮署名に漕ぎつけました。
そして11月25日に発効しました。
 交渉途中の2014年10月16日に
突然、違和感を覚えるコラムが朝鮮日報に載りました。
書いたのは楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹です。
 楊相勲主幹は政治部長、
編集局長を歴任したエース記者で、
常に冷静な記事を書くことで定評があります。
金大中顧問が保守論壇の大御所なら、
そのプリンスといったところです。

日本は許されたのに
 彼のコラム
(韓国語版)のポイントは以下です。
現在、交渉が最終段階にある韓米原子力協定は、
このままでは子孫に足かせをはめることになる。
使用済み核燃料の安全な再処理と保管、
原子力発電所の輸出に対する規制に加え、
原発燃料の安全な確保(ウラン低濃縮)までも
新たに規制するというのが米国の立場だ。
米国は日本とは濃縮・再処理のすべてを許す協定を結んでいる。
一方、韓国に対してはIAEAが保障した
濃縮・再処理の権限まで封鎖しようというのだ。
過去、核爆弾を作ろうとしたからと言うが、40年も前の話だ。
我々は米国の政治・経済・軍事の力に対し
過度に委縮している。
この陥穽から抜け出る意思もなく、
米国に道理を説く時間もないのなら
協定に署名すべきではない。
急ぐ理由はない。歴史に罪を残すな。

無理筋で強引な交渉
この記事も
「米国に委縮するな」と訴えているのですね。
鈴置
:楊相勲主幹も親米保守ですが、
国の生存がかかった問題だけに
絶対に米国と妥協するな、と国民に呼び掛けたのでしょう。
 それにしても楊相勲主幹らしからぬ強引な論理です。
米国が日本に濃縮・再処理を認めたのは、
協定の締結前から日本がその能力を持っていたからです。
 韓国がIAEA規約に違反しウラン濃縮したのは、
この記事が書かれた
2014年から見て14年前のことです。
40年前ではありません。
 韓国政府はメディアに
「我が国は差別されている」と書かせて
反米感情を煽り、交渉圧力に活用しようとしました。
が、韓国の専門家の中にも
「無理筋の交渉テクニック」と評する声がありました。
 というのに楊相勲主幹は
「子孫に罪を犯す」との情緒的な表現まで使って、
交渉に警鐘を鳴らしたのです。
濃縮・再処理の権利をここで得ておかないと、
国益を大きく毀損するとの
危機感があったに違いありません。
 「一歩踏み出した韓国の核武装論」でも
引用したようにこの後、楊相勲主幹は
(2015年5月21日、韓国語版)で核武装の必要性を説きました。
(韓国語版)を書いて、
原子力潜水艦の保有を訴えました。

軍と保守勢力がタッグ
何だか、軍と朝鮮日報が
タッグを組んでいるみたいですね。
鈴置:
証拠は一切ありませんが、心証ではそうです。
軍の意向を受けた保守勢力の一部が、
核武装に向けコンセンサス作りに乗り出したかに見えます。
メディアでは朝鮮日報だけでなく、
趙甲済氏ら保守指導者が
彼らのサイトで核武装を呼び掛けています。

結局、新たな米韓原子力協定は
楊相勲主幹の願い通りに結ばれたのですか?
鈴置:
楊相勲主幹が満足したかは分かりませんが、
2015年に結び直した新協定では、
韓国は制限付きながら、濃縮と再処理を認められました。
 ウラン濃縮は「条件が整えば」
との前提で20%まで可能になりました。
案件ごとに米国の同意が必要だった
使用済み核燃料の再処理は、
一部の工程だけですが
既存の研究所で実施するなら同意が不要になりました。
 「新協定で核兵器開発が直ちに可能になるわけではない。
しかし、核武装への道を開いたことは確かだ」
というのが原子力専門家の一致した見方です。

今後、韓国の核武装論者は
どうやってそれを実現するつもりでしょうか? 
米国は認めるのですか? 
国民の核コンプレックスは乗り越えられるのですか?
鈴置:
それは次回に詳しく分析します。

前回から読む)
 北朝鮮の核開発を引き金にした韓国の核武装論。
今や「韓国の孤立」が後押しする。

北の核武装は秒読み
前回は、韓国の核武装論に本腰が入ったという話でした。
なぜ今、なのでしょうか。
鈴置:
北朝鮮の核開発が進み、
近く実戦配備される可能性が高まったからです。
北は2006年以降、
3回の核実験を実施しました(表「北朝鮮の核実験」参照)。
●北朝鮮の核実験
1回目 2006年10月9日 M4.2
2回目 2009年5月25日 M4.7
3回目 2013年2月12日 M5.1
注)数字は実験によって起きた地震の規模。
米地質研究所の発表による

核爆発の規模も尻上がりで、
すでに相当の威力の核爆弾を
開発済みと見る専門家が多いのです。
残る課題はミサイルに積めるよう小型化することで、
4回目はそのための実験と見られています。
 2-4年に1度という過去の実験のペースから見て、
北がいつ4回目の実験を実施してもおかしくない状況です。
それに成功すれば直ちに実戦配備に入るのは確実です。
 北朝鮮は日本と韓国に届く
短・中距離弾道ミサイルは開発済みです。
2015年5月9日には「潜水艦からの
水中発射実験にも成功した」と発表しています。
もちろん通常動力型の潜水艦です。
 地上基地とは異なって
潜水艦は敵の先制攻撃を受けにくい。
このため核保有国にとって、弾道ミサイルを
水中から発射できる潜水艦を保有することは必須なのです。
 ただ、本当に北朝鮮が
弾道ミサイル搭載型潜水艦を実用化したかは、
疑問視する向きが多いのです。
11月28日にも実験したようですが、
韓国政府は失敗したと判断しています。

東京を守るためにロスを犠牲?
なぜ、韓国と比べ
日本では北の核が騒ぎにならないのでしょうか。
鈴置:
日本人が平和ボケしているからです。
北朝鮮が核兵器を実戦配備すれば、
日本の安全は大きく揺らぎます。
北にとって日本は“立派な”仮想敵国なのです。
でも、日本には北の核は対韓国用と思い込んでいる人が多い。
 もう1つは、米国との同盟に対する信頼感の差でしょう。
日本人は米国の核の傘に入っているから、
北朝鮮や中国の核攻撃は受けないと信じがちです。
 でも、米国の核の傘は揺らぎ始めています。
前回に紹介した米ケイトー研究所(Cato Institute)の
(10月21日)という論文で、筆者のドーグ・バンドウ
(Doug Bandou)シニア・フェローは以下のように書いています。
現在、北東アジアでは中国、ロシア、北朝鮮という
悪漢だけが最終兵器を持っていて、
米国の同盟国である民主国家はいずれも持っていない。
その結果、米国はソウル、東京、台北を守る代わりに、
ロサンゼルスを危険にさらす羽目に陥っている。

見捨てられやすい韓国
 「なぜ、日本を守るために
米国が核攻撃のリスクを引き受けねばならないのか」
との指摘です。
もちろん、非介入主義を掲げているケイトー研究所は、
米国の平均的な意見ではありません。
 しかし、米国で左右を問わず
孤立主義が力を増していることを考えると、
見過ごせない指摘です。

 一方、韓国は米国の孤立主義が増すというのに
中国に急接近したので、ますます
「見捨てられやすく」なってしまいました。
これが韓国の核武装論を加速しているのは間違いありません。

 10月16日、米韓首脳会談後の共同記者会見で、
中国の南シナ海の軍事基地化を念頭に
オバマ大統領が以下のように語りました。
朴槿恵(パク・クンヘ)大統領をすぐ横に置いての発言です
(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。
朴大統領にも伝えたのだが、1つだけ、
中国に言い続けねばならぬことがある。
それは中国が国際的な規範とルールに従うことだ。
もし中国がそうしない時には、
韓国が我々と同様にしっかりと声を上げて批判することを望む。

韓国を難詰したオバマ
韓国紙は「『韓国の中国傾斜論』は事実誤認だ。
日本人が言って回っているに過ぎない」と書いていましたが。
鈴置:
それに加え、韓国のメディアや政府は
「米韓同盟は盤石である」とも言い張っていたのですが、
さすがにオバマ大統領の「難詰」はこたえたようです。

 朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問は
内外の戦争」(11月3日、韓国語版)で、
韓国に怒り出した米国への困惑を
率直に記しました。ポイントは以下です。
米国は昨日までの米国ではない。朴大統領との共同会見で、
オバマ大統領が中国の国際的な規範違反に関し
「韓国も声を出すこと」を公開的に要求した事実を見れば分かる。
これは明らかに意図した外交的な逸脱だ。
これまでなら仮に会談でそんな話が出たとしても、
公開はしなかった。
したとしても「憂慮」を表明する水準に留まった。
この、韓国も声を出せとの注文は難詰に近い。
はっきりと米国は変化したのだ。
共和党の大統領候補であるトランプ(Donald Trump)が
連日「韓国の安保ただ乗り論」を言って回る。
米国メディアがTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備や、
朴大統領の中国の抗日式典参加などをことあげしては
韓国の親中路線を批判する記事を大きく載せる。
そんなムードに乗って、
オバマ大統領までも慇懃無礼に韓国を追い詰める格好だ。

「一撃」は滅亡のキーワード
米国が韓国に怒るのは当然でしょうが、
直ちに韓国を「見捨てる」とも思えません。
鈴置:
眺める者はそう考えます。
しかし、捨てられたことのある当事者、
つまり韓国人は「見捨てられ」に神経質です。
その象徴が「一撃」という言葉です。

 「一歩踏み出した韓国の核武装論」に
引用した朝鮮日報の「釜山沖で考えた生存の一撃
(11月5日、韓国語版)。
核武装を唱える楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹が、
さらに一歩踏み込んで原子力潜水艦を持とうと訴えた記事です。

 楊相勲主幹は「一撃の手段」という言葉を使って
原潜の保有を主張しましたが、
本心は核ミサイルを搭載した原潜の保有と思われます。
世界で原潜を持つのは核兵器保有国だけなのです。
「一撃」は見出しだけではなく、
本文にも繰り返し出てきます。以下です。
韓国は、必要な時に
相手に「一撃」を加えることができなければ、
ある日突然何をされるか分からない。
米海軍関係者のアドバイスは、どうすれば韓国が
一撃の手段を持ち、
最低限の抑止力を維持できるかに対する答えだ。
問題は相手に一撃を加えるには、
ただの潜水艦ではなく
原子力潜水艦を持たねばならないとの事実だ。

 実は「一撃」は、韓国が植民地に転落した際の
キーワードなのです。金大中顧問の別の記事
(10月6日、韓国語版)にも「一撃」がでてきます。
以下です。
ルーズベルトにも見捨てられた
100年前、セオドア・ルーズベルト
(Theodore Roosevelt)大統領は朝鮮を指して
「自分のために一撃もできない国」と見捨てた。
我々は1世紀後の今、「一撃」を加える
独自の力を持っているのか自問せざるを得ない。

 同じ朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員も、
国際部長時代の9月23日に「国を口先で守るのか」で
「一撃」について言及しています。
 関連部分は次の通りです。
日露戦争直前の話で、
以下に出てくる「負ける国」とはロシアのことです。
(約110年前)当時、米国公使だったホレース・アレン
(Horace Allen)は高宗の親米的姿勢に感動した。
彼はロシアを引き入れることにより、朝鮮半島で
日本を牽制すべきだとホワイトハウスの説得に動いた。
韓国の独立を支援しようとしたのだ。
セオドア・ルーズベルト大統領はアレンに反問した。
「あなたはなぜ、負ける国を支持せよと言うのか」
「自分のために一撃も加えることのできなかった国のために、
米国は介入できない」との有名な文句を残したのもその頃だ。

日本に吸収された方がいい

朝鮮日報のシニア記者3人が1カ月半のうちに3回も引用した
セオドア・ルーズベルト大統領の発言
「一撃もできない国」の原文は以下です。
We cannot possibly interfere for the Koreans against Japan. 
They could not strike one blow in their own defence.
 なお、この文句はアレンへの発言記録には見当たらず、
ジョン・ヘイ(John Hay)国務長官への
1905年1月28日の手紙に残っています。
 日本に吸収されつつある朝鮮朝
――当時は「大韓帝国」を名乗っていましたが、
米朝修交通商条約(1882年)を理由に
米国の保護を期待しました。
 しかし、ルーズベルトは
「日本に対し一撃もできなかった
――自分の国を守る能力も意思もない韓国は、
日本帝国に吸収された方が幸せだ」と考え、
実際そう書いたのです。
ヘイ国務長官への手紙には以下の文章が続きます。
It would in fact be best for the Koreans if their country
 was absorbed into the Japanese empire.
 そしてこの手紙が書かれた半年後の1905年7月に、
米国はフィリピンの支配権を日本に認めさせる代わりに、
日本による朝鮮支配を認める「桂―タフト協定」を結んだのです。

朝鮮日報は「Strike one blow=一撃」
が好きなのですね。
鈴置:
同紙に限らず、韓国の知識人には
「約110年前、敵に対する一撃の能力も意思も持たなかったため
米国から見捨てられ、
日本に併合された」という共通認識があるのです。

「千年の無礼」が復活
そこで「再び米国に見捨てられそうになった今、
一撃の能力――核抑止力を持とう」
と叫ぶ人々が出てきたのですね。
鈴置:その通りです。「一撃の能力も意思もなく」
植民地に転落することになった
屈辱の瞬間を国民に思い起こさせれば、
核武装への支持が集まると
韓国の指導層が考えるのは自然なことなのです。
韓国は「離米従中」しています。

米国を頼れないのなら、
思い切って中国を頼ればいいのでは?
鈴置:
それには米韓同盟を破棄し、
中国と同盟を結ぶ必要があります。
しかし韓国人は、そこまでのハラを固めてはいない。
結局、米国だけではなく
中国にも心底からは頼れず、頭を抱える羽目に陥ったのです。
 先に引用した朝鮮日報の金大中顧問の「内外の戦争
(11月3日、韓国語版)も「韓国に怒りだした米国」
のくだりに続き、次のような記述が続くのです。
今回の(10月31日の中韓)首脳会談でも、
中国側の報道によれば、中国はEEZ(排他的経済水域)の
再調整により、離於島(イオド)を我がものにしようとしたという。
人口と国土面積の大きさに比例して、
EEZも広くなければならぬと言うのだ。
「千年の無礼」が復活した感がある。

再び属国扱い
EEZを人口と国土面積で決めるとは?
鈴置:
中国と韓国の間には黄海があります。
しかし主張が大きく異なるため、
両国は黄海のEEZを確定できません。
 韓国は両国の中間に線を引いて、
それをEEZの境界線にしようと主張します。
しかし中国は人口と国土の大きさを考慮すれば、
中国のEEZはもっと韓国側に張り出すべきだと言い張るのです。
 中国の主張に従えば、韓国が離於島という
暗礁の上に建てた観測基地も中国側のEEZに入ります。
もちろん「人口と国土」でEEZを決めるとは前代未聞です。
 しかし、中国は韓国に首脳会談で
堂々と中国が主張する、
無理筋のEEZを受け入れるよう要求するようになった。
 今後のEEZ交渉の過程で、中国は韓国に対し
黄海や陸上での米韓合同演習の中断など、
無理難題をふっかける可能性もあります。
 韓国は再び属国扱いされるようになったのです。
金大中顧問が「『千年の無礼』が復活した感がある」
と書いたのは
「『千年余に渡る宗主国としての
上から目線』が復活した」との怒りからです。

フィリピンの失敗
なぜ今、「千年の無礼」が復活したのでしょうか。
鈴置:
米韓間に隙間風が吹き始めたからでしょう。
米国の後ろ盾をなくした韓国は、弱気になって
言うことを聞くはずと中国が考えたと思われます。
 1992年に米海軍がフィリピン・スービック海軍基地から撤収すると、
中国海軍は直ちに南シナ海での活動を活発化しました。
 1995年にはフィリピンが実効支配していた
スプラトリー(南沙)諸島のミスチーフ礁を奪いました。
20年前、米比関係に隙間風が吹いたのを、
中国は見逃さなかったのです。

確かに20年前のフィリピンと似ていますね。

鈴置:先ほどの「一撃」ではありませんが、
110年前を思い出す韓国人も増えています。
国際的な環境が日清、日露戦争当時と
似てきたと訴える記事が
しばしば韓国の新聞に載るようになりました。
 当時、日本は英国という海洋勢力の先兵となって
大陸の大国に戦いを挑んで、自らも大国に駆け上がった。
一方、韓国は国の針路を定められず、
大国の間をうろうろとして滅んだ――との内容です。

四面楚歌と核
そして、以下のように語る韓国人が出てきました。
現在は、英国の代わりに米国が日本をして
中国に戦いを挑ませている。
大陸勢力と海洋勢力の対決が再燃したのだ。
朴槿恵政権は19世紀末から20世紀初めと同じように、
大国の間を迷走するばかりだ。
そして米国や日本の後ろ盾を失いつつある我が国に、
中国は「怖い顔」を見せ始めた……。
 金大中顧問の「内外の戦争」は
米国や日本との関係悪化という現実に加え
「怖い顔を見せ始めた中国」への恐怖も語っているのです。
 韓国人は自分が四面楚歌に陥ったことにようやく気づきました。
そんな心細い状況下で「核を持とう」とささやかれたら、
韓国人の多くが思わず「そうだ!」と叫ぶでしょう。
 四半世紀前、冷戦体制が崩壊する中で
中ソに見捨てられた北朝鮮は核開発に本腰を入れました。
今、南でも同じことが起きているのです。(次回に続く)

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